第4章 明日も仕事、頑張れそうだよ【イッキ】
「ただいま」
「イッキさん! お帰りなさい」
毎日、キミがこうして家で待っていてくれる。
何度夢見たことかわからないけど、それが今現実としてここにある。
お互い社会人になってキミも働いてるけど、ボクよりはいつも帰りが早いから、ボクが帰る頃にはキミはもう家にいる。
待っていてくれるキミを想像しながら家に帰るのが楽しみなんだ。
今日は夜遅くまで会議やら書類作成やらあって、いつもより遅くなっちゃった。
もう夜の10時。
ネクタイを解いていたら、ハンガーを持って待ってくれているキミが、健気で可愛い。
「こんな時間まで待たせてごめんね。ご飯、ちゃんと食べた?」
「はい、食べました。イッキさんも、しっかり食べられましたか?」
「まぁ、食べては来たんだけど……」
ここで言葉を止めたから、キミは不思議そうな顔をしてるね。
それでも渡したスーツの上着はちゃんとハンガーにかけてくれる。
「あまり食べてこられなかったんですか?」
「ううん、そうじゃなくてね」
からハンガーを取り適当にそこら辺にかけて、きゅっと抱きしめた。
あぁ、柔らかい……これが欲しかった。
「キミが足りなくてさ。癒してくれないかな」
「あ……わ、私も、イッキさんが足りませんでした。癒します」
「ハハッ、ほんとに可愛なぁ」
きゅっと優しくボクを抱き締め返してくれる優しさが心地いい。
だめだな、何年キミの傍にいても、心臓は飽きることなく速い鼓動をうつんだ。
「はぁ……食べちゃいたい」
「え! 美味しくないですよ」
「美味しいに決まってるよ……ねぇ、食べさせて」
「な、何をですか……」
「ふぅん? とぼけるんだ。本当はわかってるでしょ?」
だって、こんなに顔が赤いもんね。
目を逸らしてるけど、それは肯定しか表さないよ。
早くキミに触れさせて。