第2章 優先すべき事
その日の放課後、いつも通り名が遅くまで残っていると夜風と共に男バレが現れ
「名見えねー」
とドレスの影に隠れてしまう名に菅原がそう言う。
「うわ凄いな」
と澤村が続き、東峰だけは昨日名がそのドレスを着ていた事を知っていて、その姿を思い出して少し赤くなる。
「名相手どうすんの?」
途端の菅原の質問を不思議に思う東峰。
「あぁ、苗あれに出すのか」
毎年行われる3年被服専攻のファッションショー、最後にドレスシーンがあり、エスコート役は女子が男装したり、恋人同士だったり、先生に頼んだりと様々で、男子より女子が盛り上がるイベントである。
「ドレスが出せれば良いからなー」
と呑気な本人に
「可哀想だなぁ。そしたら俺が!」
と、その菅原の発言に東峰が少しドキリとしていると
「お断りします!」
と即答の名。
「スガふられたなー」
「なー」
笑う菅原達に冗談だと分かりほっとし、まぁ本気だったら、本気だったら・・・なんとなく嫌な気がするのはなんでだろうかとはたとする東峰。
「さ、帰ろーぜ」
菅原の一言を合図に名が片付けを始めていると
「俺先に行ってるぞ」
「ちょ、大地待てよ。じゃーなー名!」
そうして東峰が出遅れていると
「旭は名と帰れよー!」
「苗1人じゃ危ないし、お前となら大丈夫だろ」
そう言って先に行かれてしまい、片付けを終えた名がみんなは?と東峰のところに寄れば、東峰はため息をついて
「名一人じゃ危ないからって置いてかれた」
「皆優しいなー。置いていかれる辺りさすが東峰」
そう笑う名に、まぁ二人で帰れるのは良いなと思う。
「じゃ、帰るか」
「うん」
「もう暗いし、一人じゃ怖いべ」
と東峰が靴を脱いで家庭科室に入ってくれば
「東峰怖いの?」
「暗い校舎とか怖いだろー。何かでそう」
震えている東峰に
「東峰ってホント見た目と違うねー」
と笑いつつ、いつもなら少し怖い校舎も
「やっぱり一人の時より怖くないや」
と心強く思ってそう伝える。
「俺は若干怖いけどなー」
その発言がまた可笑しくて、話しながら校舎を抜け帰宅していった。