第1章 気になる君
朝練がない日の事、登校していると前を歩く大きな紙袋をもった名
「凄い荷物だなー」
「あ、東峰おはよー。こんな時間に珍しい」
「今日は朝練休みなんだ」
「毎朝大変だねー」
ガサガサと音をたてている中身は真っ白な生地
「新作?」
そうきくと、名はにーっと笑ってそうだと言った。
「学校に置いてって良いってお許しをいただけたので持ってきた。まぁ、学校でしかできなくなるんだけど、時間決めて動かないとだしね」
「時間なー」
時間はない。春高が始まる。県予選、進めばあの伊達高が待っている。練習あるのみだがふと間に合うかという考えだってよぎる。けれども一度逃げた身。逃げて、やっぱり好きで、頼もしい仲間達が今もいる。
「やってくしかないんだよな」
「そーそー。頑張るぞー!」
「ま、お前はちゃんと飯食え。」
と頭を撫でそうになり、以前気にしていた事を思い出して手をひっこめる。それに気づいていない名は誇らし気な顔をして
「今日は違うのだよ東峰君」
「・・・・あ、なんか予想ついたわ」
「え?!」
「昼飯、今日は上来いよ」
「うん」
クラスにつくと名の荷物に被服専攻の女子達が注目しきゃっきゃする、その姿に名も女子だなと思い、やっぱり笑った方が可愛いとも思う。別に可愛いっていうのは変な意味でなくて、清水とかにも思うのと一緒で、あぁ、でも改めて見ても可愛いかも。
「どした東峰」
「いや別に・・・」
隣の席の奴に不思議がられて始まったその日。今思うとその日は初めてちゃんとお昼を約束した日でいつもなら屋上に向かうのはそれぞれだったのに、授業が終わると
「東峰、お昼行こう」
と名が東峰に声をかける。
「え、あぁ、あー今行くわ。ちょっと待って」
本人は至って普通だが、この年頃の男子はそういうのにはなかなか弱いのだ。
「お、今日は一緒なのなー」
屋上に着くと菅原にそう言われる。
「ふふーん。今日はお弁当なんだー」
「お、すげー!名がまともな飯!」
菅原とのやり取りに
「あぁ、やっぱりな。そーだろーと思った」
と笑う東峰。
「・・・なんかまともな物食べてない言い方するからお母さんに頑張ってもらったの。」
「それは悪かったなー」
すると名は少し照れくさそうに
「けどおかげで久々のお弁当で嬉しいよ」
とそう言った。