第5章 最後の思い出2
「帰り、送ってあげると良い」
「え?」
「そんなに集中してるなら帰りも気づかないだろ」
「「あー」」
と妙に納得して笑えてしまい、その後、コーチに注意され練習が始まっていった。毎回思うが、こうあっという間に時間が過ぎてしまうのはどうしてだろうか。なのに練習後の疲労感は時間を物語る。集中しているのか、はたまた何も考えないでいたのか。後者でないといいと思いながらいつも一人心の中で反省会。そして、
「じゃーなー」
「名とは連絡ついたん?」
「つかないから家庭科室寄ってみるわ」
大地達と別れて家庭科室へ向かうと案の定黙々とミシンを踏む名の姿。一応最終下校時間まではあと少しある。なので壁を背もたれに待つ事にした。ミシンの音と名の後ろ姿、黒い生地で作ってるそれはなんだろう・・・
「あーずーまーね」
そう思っている内に短時間ではあるが眠ってしまった様で名の声で目を覚ます
!?
覚ました途端、目の前にある名の顔。
「う、うわっ」
「ちょ、ちょっと!」
驚いて椅子事ひっくり返りそうになる東峰を名が支え、東峰も踏みとどまり、ひっくり返ることは防げた。そして落ち着いた瞬間二人で笑ってしまう。
「待たせててごめんね」
「名いつも集中してっしなんかなぁ」
「すみません・・・」
「いや謝んなくても、良いことだし」
鞄を肩にかけた名と片付けられた教室を見て
「おしっ、じゃぁ帰るか」
と声をかければ
「いつもありがとう」
と笑顔を返される。一緒に帰っていると横でガサゴソと鳴る紙袋に入った黒い生地の塊。
「それ」
「あ、お店にみんな居る感じだよ。寄ってく?」
その正体を聞こうとすると、タイミング良く名がそう言って
「今何か言おうとした?」
「いや、あー、寄ってかないで帰ろうか」
と、予想通りの答えが返ってくるのも嫌で逃げてしまう建前でメンバーと合わす顔もなく店をあとにした。
「明日は来んの?」
「ううん。今日だけ。」
「そっか」
明日は来ないのかと残念に思っていると
「代表戦、本当におめでとう。クロ達も嬉しそうだったよ」
そう言われ祝杯された事に喜ぶべきなのに、気になるのは
(黒尾と連絡とる仲かー)
と、こんなことで嫉妬してる自分に呆れてしまう。
「東峰?」