第5章 最後の思い出2
「あ、あぁごめん。大丈夫だ。」
全くどうかしてる。恋愛はしないつもりなのに恋愛しまくってる自分。来月からは代表戦が待ってるのにどうしたものか。
「本当に大丈夫?」
はぁとため息をつく東峰を心配する名。そんな名のもつ荷物が代表選と同じくらい気になってるなど口が避けても言える訳はなく、夏休みはあの日以来名と会うことはなく
「進展なしか」
と8月ラストの遠征では黒尾に笑われる始末だった。
「てか名も遠征連れてこれねーの?」
「いやぁ、名は部員じゃないからな」
と東峰。
「あいつそっちでバレーじゃないの?」
そこで黒尾と少し間があく。
「名バレー部じゃないんですか?!」
と夜久
「え?違うけど?なんでそんなに驚きの声??」
と菅原がきけば
「いやいや、だってあいつ、俺たちと練習してるんだぜ?」
という事は、レシーブやらなんやらの基礎はお手の物で、
「まさか名が元バレー部とは」
と三年トリオが休憩中に並んで肩を落とす。
「まぁ、でもそうだよな。叔父が監督で、練習相手がこれで」
「上手くもなるわ」
確かに夏休み、休憩中にやっていた女子マネ達のお遊びバレーに交じってもなんの違和感もなかった
「清水もうまいのに」
「そんな清水と一緒に居れるっていうのは」
「上手いってことだよなー」
あぁ本当に練習中何を思われていたのか、下手?上手?見込みがある??あぁ、考えただけで恥ずかしいというかへこんでしまう。
(会いてぇーなぁ)
と相変わらずのペナルティを受けたあと空をあおぎながらそう思った高校三年生の夏休み。好きな子とのきゃぴきゃぴの予定は全くなく、驚きの発見ばかりで終わってしまった。しかも、恋愛はしないと言っていたはずがすっかり恋愛モード。夏休みが明けたらあの黒い存在も気になるし、代表戦も文化祭も待っている。あの黒い衣装を着る奴が決まってしまう。いやいやそちらに気に取られていれば代表戦もとられてしまう。
「疲れたー!!!」
と横で同じく寝そべる菅原を見て
「ん?」
「いや、疲れたな」
と名にとって、きっと一番であろう候補の菅原に嫉妬しつつ、伊達高の鉄壁にも嫉妬をしつつ
「ほんと疲れるわ」
と自分にも疲れてきてしまう東峰だった。