第4章 最後の思い出1
そして、その度にその代のマネージャー達にそう言われて今もいる。けれども高校三年生、叔父とも今年が最後だと話はついている。先生でも生徒でも、ましてや次からは学生でもない自分は居られない。昔、猫又先生ともこの代はこの代でしかないといった話をした覚えがある。
「このあともやるの?」
大滝がそんな昔の話を思い出してる名に問えば
「やるやる」
と、食堂を後にしまた家庭科室へもどる名。
誰も居ない家庭科室、なにをこんなにずっとやっているのだろうと思う事もある。けれども、それでも何かしていないと、立ち止まっているのだけは嫌だと思う。そうしてガタガタとミシンの音だけが響いていくと
「名ー、消灯」
「キャ!」
集中しだした頃、家庭科室の戸が開きまさかの東峰がやってきた。
「あぁ、驚かせてごめん」
と苦笑する東峰。
「清水に呼んできてって頼まれた」
風呂上がりで髪が完璧におろさせている姿に一瞬誰だかわからず、そもそも人が来るとも思っておらず驚いた名。
「そ、そうなんだ」
「おー。消灯時間なるぞ」
「は、はい」
片付けを始め。それを待つ東峰に声をかければ
「いやぁ、暗いし一緒に帰るべ」
と笑って片付けを手伝いだし、合間にドレスを誉められ、すごいすごいと言われて嬉しくなる。鍵を閉め、荒川監督に返しに行けば
「なんだお前ら付き合ってんのか!」
と少し酔った荒川監督にちゃかされ
「違うから!はい!鍵!ありがとうございました!!!」
と恥ずかしさで急いで鍵を返す。
「いやぁ恋も青春の一つだ!」
「もう分かったからー」
と後ろの方で烏養コーチの呆れ顔を見つつ荒川監督を部屋へ押し込む。
「面白い監督だな」
「あぁ、もぅ、ほろ酔いの時が一番面倒なの!」
恥ずかしい叔父の姿を見られてさらに恥ずかしくなってしまう。
「名は好きな奴いんの?」
「は?」
突然、東峰にそう聞かれ一瞬時が止まる。先程の叔父の言葉が脳裏を過る。一方東峰はただ単に菅原へ想いがあるのかだけを確かめたかっただけで
「あ、いやぁ、森然の監督があぁ言ったからついな」
とごまかせば
「うーん。今は良いかな。私はドレスで忙しいし」
「あーお互い三年なのに忙しいな」
と笑い合い、遠回しにお互い恋愛はしないと言う境界線を張られた様な気がして一瞬間があく。