第3章 想うのは君の事
『寂しいね』
そう思っているのは自分だけではない事を知っている。そうして1年生達が現れ、なんとか勝ちだし、あっという間に遠征が終わった。帰り道、立ち寄ったインターチェンジで休憩時間の間に東京土産らしいストラップを見て
『行った事ないなぁ』
と言っていた名がよぎり、女子の好きそうなビーズがたくさんついたそれを買っていた。
「旭何買ったんだよー」
「な、た、大したもんじゃないよ」
と曖昧にすれば
「苗への土産とか?」
なんて澤村がにやついて言うのでばれたと思った表情をしてしまい
「あーあ!俺も恋愛してー!!」
と言う菅原達にからかわれながら、買ったストラップを手に
『嬉しい』
と喜んで笑顔を見せる名を想像しながらまたバスに揺られながら地元へ帰って行った。
そして、週末明け、
「「おはよ」」
朝の教室、かぶったねと笑う名を目の前にいつ渡そうかと考えまくっていたのに
「お土産」
とそっけなくしか渡せなかった東峰。
「え?何?東京の?」
「い、いや、そうなんだけど、名東京行った事ないって言ってたし、応援もしてくれたから、その、あのお礼···」
最後の方はしどろもどろで聞き取りにくい程で
「渡し方も女子か!」
と笑う名はありがとうと言いながら封をあけ中を見る。
(気、気に入るかな)
「か」
(か?)
「可愛い」
表情からも気に入ってくれたのが分かり
「良かった」
嬉しそうにする名を見て安堵する。早速筆箱につけられたストラップは毎回目に入って自分だったら恥ずかしくなりそうだと思う東峰。
案の定、授業の度チラチラと目に入るそれが気になる名。あんな風貌の男子がこんなに可愛いストラップを、しかもきっと東峰の事だ少し恥ずかしそうに買ったに違いない。
(可愛すぎる!ギャップが凄すぎる!)
女子にお土産と言うのはやはりそういう、恋愛感情が少なからずともあると言う事なんだろうか。もしそういう事ならば、東峰を対象として自分は見られるだろうか
(可愛い系だもんな)
先ほどの照れながらの渡し方、喜んだ事を喜んで、お花が舞っていそうな雰囲気。いじられる時、目をはの字にしながらたじたじになったり、照れたり、キョドったり。
(中身は乙女だよね東峰って)