第3章 想うのは君の事
「けど、東京から帰ったら夏休みか」
教室へ戻る途中そんな事を話していると、ふと
「寂しいな」
とぽつりと言ってしまった言葉に前を歩いていた名が振り向き
「寂しいね」
と眉をハノ字にしつつも笑いながら、けれども残念そうに言った。
『寂しいね』
下校になり部室に行き、ジャージに着替えながらずっとその一言が頭から離れない。思い出す度、同じ想いをしている事が嬉しくなる。
「腑抜けてんなボケェ!!」
「色ボケアターック!!」
花舞う東峰に3年生からの気合い入れのつっこみ。
「痛いっつーのっ」
全く全くと二人に愚痴々言われながら体育館に近づくと
「東峰」
「今度は何?!」
と驚けば、同じく驚いている清水。
「うぁわ、ごめん。そうだよな女子の声だもんな、ごめんなっっ」
「なんか良いことあったの?」
驚かせて悪かったと謝ればそうきかれる。
「俺そんなに緩んでるか?」
清水が頷けばあちゃーと思いながら両頬を叩いて気合いを入れ直す東峰
「ま、苗さん良い子だと思うし良いんだけど、怪我だけはしないでね」
それだけ言い残し先に体育館に入る清水に
(清水にまで知られてる・・・!)
と駄々漏れの東峰の恋心は相手にだけは伝わらない不思議なものなようで。
(名の事はそう、全部終わってからだ)
部活が始まり練習していくとそう思う。かけ声、ボールの打ち当たる音
(今はやっぱりこれだ。)
「いいぞ!東峰!」
「ウス!」
烏飼の掛け声と東峰の表情に安心する3年生。
「明日遅刻すんなよー」
「「ウィースッ」」
明日の説明を受け、帰宅中
「ま、こっち優先なのは嬉しい事だけど」
「あー俺も恋愛してー」
「なんだよぉ。俺が気合い入れたってのに」
「まぁさ、学生っぽくて良いじゃん?俺、好きとかなんだとかよくわからないからさ」
と笑う澤村に
((大地もなぁ))
と思う菅原と東峰。次の日、バスの中にて
「こっちが優先なのは当然として!だからって放っておくとどこぞの馬の骨に持ってかれちゃうからな」
と菅原に言われ「怖いこと言うなよー」とおろおろと心配する東峰。
東京に着き、日向影山が居ない烏野はとにかく負けっぱなし。こんな何度もフライングばかりしてみっともないと思う、けれども何か得たい気持ちの方がうわまってはね除けられる。それに