【HQ】岩ちゃんが男前過ぎて今日も私は死にそうです
第2章 女の子
「あ…岩ちゃん、試合お疲れ様。」
背負い投げをした時、誰かに名前を呼ばれたような気がしたけど、私の名前を呼んだのは岩ちゃんだったらしい。
無表情のまま早足で距離を縮めてくる岩ちゃん。え?何?怒ってる?
「この…ボゲェッ!!」
頭の上で響いた怒声に思わず肩が跳ねた。初めて岩ちゃんに向けられた怒りに少しだけ体が震えた。
「こういう時は周りを頼れって言ったべや!怪我でもしたらどうすんだ!」
「いや…でも、私…。」
同い年の子達と比べたら体は小さいけど、何かあった時の為の心得があるし、それを対処する自信もある。今までだって周りの誰かを頼らなくても自分でどうにか出来てた。今回だってコイツからマッキーを助けられた。我ながら見事な背負い投げだったと思う。私なら大丈夫だよ、って言いたかったのに、鬼のような形相で怒る岩ちゃんに萎縮して言葉が上手く出てこなかった。
「いくらお前が強くたってな、お前は女なんだぞ!?お前の身に何かあったら悲しむ奴がいるって分かんねーのかよ!?」
岩ちゃんは怒ってるんじゃない。心配してくれてるんだ。自分より大きな相手を投げ飛ばす姿を見ても、岩ちゃんは私を女の子として見てくれてるんだ。
「つ…次からは助けを呼ぶ!岩ちゃんを呼ぶ!」
私の言葉にいつも通りの表情を浮かべる岩ちゃんを見てホッとした。…ああ、そっか。さっき言葉が上手く出なかったのは、怒ってる岩ちゃんに萎縮したからじゃない。嫌われたかもしれないって思ったから怖かったんだ。