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よるがあけるよ

第5章 見知らぬS型


『この前ね、この駅廃墟のホームで敵対心のない機械生命体の群れと出会ったの。結局は6Eの小規模部隊の隊員たちに壊滅されちゃったんだけど……。でも1体だけ庇った個体が居たんだ。もしかしたら生き残ってるんじゃないかと思って。』
10Dが足音の方向を探りながら答える。
通路は中途半端に広く、音の反響しやすい構造になっているからか居場所が掴みにくいようだ。
『そう言えば、どうして12Sは今6Eの部隊と一緒に行動してないの?。』
「え? そりゃあ、四六時中同じメンバーで任務をするわけじゃないからな。必要な時だけ収集が掛けられる特殊編成だ。10Dはやったことないのか?」
『私は方向音痴だから、最初の任務が最後の集団行動になっちゃった。』
苦笑いを浮かべながら12Sに返す。迷子になったのがきっかけで部隊が混乱状態になり、結果的に任務は失敗に終わってしまったのだ。
「……10Dの言う6Eの部隊、本来ならその日に僕も参加してた筈だったんだ。でも任務の数日前に死んだせいでプラグイン・チップなんかが全部外れて機体が弱体化してた。それで任務から外されたんだ」
『あぁ、そういや6E達も12Sが居ればなぁって戦闘中に言ってたような。』
プラグイン・チップは死んだ機体から回収しなければならないが、5Bが散々探しても12Sタイプは見つけられなかったそうだからもう無理だろう、と10Dは密かに思った。
「君ら、大型機械生命体とも戦ったそうだな。6Eから任務後に聞いた報告ではその場に居た機械生命体は全部破壊したって内容だったよ」
『全部……。』
隠した機械生命体がその時に出て来てしまっていたら、もう既に壊されていることになる。
論理ウイルスの感染後のショックで気絶していた為、後半のことを全く知らない状態だ。憶測で生死を判断するのは止めた方がいいだろう。
『まだ生き残ったのが何体か居るかもしれないから、そう簡単に諦められないよ。6Eたちがほぼ全部の機械生命体を壊したのは確かだけど。』
「ソレ、ホントウ……?」
不意に幼い声が聞こえて、10Dと12Sがその方向に目を向ける。
1体の機械生命体が、赤と青の人類のピクトグラムが掲げられた仕切りから顔を出していた。
その手には朽ちかけた本を抱えている。
『あ……君は!。』
10Dがその機械生命体を見て声を上げた。
「うわ、本当に喋るのか……」
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