第3章 平和主義者
カシャン、カシャン、と一定のリズムで金属がコンクリートをかする音が響く。
1体で駅廃墟に向かって歩いている機械生命体の両手には、何処からか集めてきたらしいガラクタが乗せられている。
金属板や鉄筋など、大きめの物が多い。
10Dは建物の陰に身を潜め、駅廃墟に入っていく機械生命体の様子を伺った。
『……尾行してみよっか。』
ポッドと共に、機械生命体の後を追いこっそり侵入する。
巣になっているという噂があった割りには追跡対象以外の機械生命体の姿がない。
これなら余裕を持って探索できそうだと思い、10Dは緊張するのを止めた。
暗視機能のお陰で構内はよく見える。所々に太い柱があるから、仮のゴーグルのままだったら絶対にぶつかっていただろう。
『そう言えば駅廃墟に入ったの初めてだね。』
考えてみれば、以前は瓦礫が出入り口を覆い尽くして入ることが出来なかったのだ。瓦礫を退かしたのも機械生命体達なのだろうか。
そんなことを考えながら10Dは足音の方向を見る。
遠くを歩いている先程の機械生命体は左の曲がり角へ消えた。
足音を忍ばせて曲がり角手前まで走る。覗いてみると、腰辺りまでの高さの直方体が平行に並んでいた。
機械生命体の胴の太さでは直方体の間を通るには狭すぎるようだが、慣れた様子でピョンと飛び跳ねて越える。
『あれは何?。』
10Dが声量を抑えて訊く。
「回答:自動改札機」
『改札機?。』
「報告:そもそも駅とは列車というレール上を走る乗り物に乗車する為の施設であり、乗車する際には賃金を事前に支払い乗車券を得て係員に見せなければいけなかった。だがあまりに利用客が多い場合は効率的な運営が出来ない為、無人でも乗車券を確認出来る機能を持つ機械を設置。それが自動改札機である」
ポッドも10Dと同様にボリュームを抑えて話す。
目の前の機械生命体はまだこちらに気が付いてないようで、のんびりとした足音を鳴らしていた。
『ふーん、これも人類がつくった機械なんだ……。』
アンドロイドと違って愛想の無い形状だね、と言いながら10Dは改札機の間を通る。
改札の後に続く階段を上がると、通路を挟んで4つに分かれた階段がまたあった。
強い風が吹き込む。どうやら外に繋がる出口になっているようだ。