第6章 目覚め
まさかこんなに時間が掛かったなんて。
散々走ってようやく駆け付けた隊員がボロボロになった仲間の姿を目の当たりにする。嘆息しながら、こちらに気付いていない怪獣型機械生命体の背を四〇式拳鍔で叩き潰した。
怪獣型が悲鳴を上げて絶命していく最中、応援要請をしていた仲間が驚いた様子で隊員を見た。
『5B!!。』
次の怪獣型を攻撃しながら呼び声に応える。
「元気そうで何よりよ、10D」
2体目を倒して次を殴りにいく。足蹴を真っ正面から拳で受け止める。重いけれど、圧し勝てばいいだけだ。
壊れた3体目に踵を返して5Bは10Dに近寄る。
残りはたったの1体。10Dだけで倒せるはずだが、義体の損傷や疲弊もあってか手こずっているようだった。
「大丈夫なの?」
『5B!。大丈夫じゃないっ……来てくれないかと思った!。』
寸でのところで攻撃をかわしながら返事をする10Dは少し怒っているように見えた。けれどその口は安堵したような笑みも浮かべているようにも思える。
いずれにしろ、疲れきった表情からは正しい感情など読み取れない。
「だらしないわねぇ。さっさと倒して帰るわよ」
間に合って良かったわ。
そう思いながら5Bが怪獣型に向かって拳を振りかぶる。
その時、最後の怪獣型が光線を放ちポッド107を撃ち抜いた。
呆気に取られた様子の10Dと、少し遠くへ弾き飛ばされていくポッド107を視界の隅で捉える。
『……ポッド!。』
10Dがポッド107へ手を伸ばすのと5Bが怪獣型を叩き潰すのはほぼ同時の事だった。
「10D、諦めなさい!」
そっちは崖よ。急いでそう伝えようとしたが、既に10Dは崖の縁を蹴飛ばして空中でポッド107を掴まえていた。
飛び散る怪獣型の部品と爆発に視界を遮られる。
けれど5Bは確かにその目で、崖に落ちていく2機の姿を確認した。
あの崖はかなり深い。底が見えないくらいだ。落ちたらきっと衝撃で義体は破壊するだろう。
けれどポッドが居るならおそらく大丈夫だ。ゆっくり着地し、やがてポッド107が10Dをサルベージするはず。
そう見込んだ5Bは直後に到着した他の隊員と共に崖下を覗いて待機したが、いくら待っても淵の景色は暗く沈んだままだった。