第2章 壊された電灯
廃墟都市の屋上で飛行ユニットから降りる。
「確認:修理したゴーグルの調子」
飛行ユニットにセットされていたポッド107が出て来ながら10Dに問いかける。
『うん、大丈夫そうだよ。景色が前よりはっきり見える。』
仮のゴーグルにはなかった暗視機能が戻ってきた。
半年も待ったおかげで暗闇には慣れたものだが、やはり見えないより見える方がいい。
色味のない風景を眺めながら現在地の確認をした。
『あっちがレジスタンスキャンプだよね。』
「回答:可も無く不可も無い。指差す方向が大雑把過ぎるため」
『じゃあ大体あっちで合ってるかな。』
ポッド107に掴まり建物の屋上から飛び下りる。
今なら地面までの距離も周りの建物もよく見える。着地点には機械生命体は居ないみたいだ。
安心してボロボロのアスファルトを踏みしめる。
ポッド107にキャンプのある方向をゴーグルに表示してもらってから目的地に向かった。
レジスタンスキャンプに着くと、10Dはヨルハのアンドロイド用に貸し出されている部屋に入る。
現在10D以外に利用する者は居ないようだ。
武器とゴーグルを外し、自分のベッドに腰掛けた。
ポシェットから先程司令官にもらったイヤーカフを出し、付け方を確認する。
『耳に着けるんだよね?。』
太短い筒のような形状で、耳たぶの形に沿うように少しだけ曲がっている。耳に挟み込む為の隙間があり、穴の方向から見たら繋がりそこねた円のようだ。
「報告:人類のデータによると、その形のタイプは薄い金具などで作られており、隙間の大きさを指で調整していた物が主流。10Dの与えられた物は随分と厚い」
『そうだね。1.5~2㎜くらいかな……硬いし調節出来そうにないね。』
「推測:GPSが内蔵されているため」
『じゃあ、仕方ないから無理やり嵌め込むか。』
剥き出しになった耳たぶの上部にイヤーカフを力任せに差し込む。
人体でいう軟骨のような柔らかい素材は使われていないため、人工皮膚の僅かな柔軟さに頼るしかなかった。
多少苦戦し、ポッド107が見守るなか目一杯時間を掛けて装着し終える。
『よし、やっと付い……痛っ!。』
10Dが達成感に思わず立ち上がった瞬間、痛みを訴えて踞った。
イヤーカフを装着している方の耳を押さえている。
どうしたのかとポッド107がおそるおそる10Dに近寄る。