第1章 髪飾り【エレン・イェーガー/甘】
この後も私に何回も帰っていいよ、と言われたにも関わらず無理やり髪留め探しに参加したエレン。
草むらに顔を突っ込んでまで探してくれるエレンに私は少しずつだけど心を許していってる気がした。
『これか!?!?』
草むらから顔を出すエレンは土まみれになっていた。手に握られているのは、紛れもなく私の髪留めだった。
『っ!これ!あった………良かった』
私は嬉しさと安心のあまりその場に座り込んでしまう。
『お、おい、大丈夫かよ』
すぐに私のそばに駆け寄ってくれるエレン。そして慣れない手で背中を撫でてくれる。
『そんなに大切なもんだったんだな』
『うん………これお母さんの形見なの』
私の母親は病気によって小さい頃死んでしまった。いつもお母さんが付けていたこの髪留めは私にあずけられた。だからなくす訳にはいかない。
もうそれから5年ほど経ったのにも関わらず涙が溢れてくる。
エレンはというと私が泣いていることに戸惑いを隠せないのか、自分のきていた上着を私の顔が見えないようにのせてきた。ふわっと石鹸の匂いがした。
『わかる、俺も母さんいないから』
『そ、そだったの……?』
『あの日、目の前で巨人に食われた』
あの日、というのはシガンシナ区での出来事のことだろう。