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【YOI男主】激突!皇帝VS風雅人・長谷津冬の陣

第2章 プロローグ~side RUSSIA~


ヴィクトルの自由奔放さにヤコフが説教、というのは最早いつもの事なので、ユーリはそのまま無視して彼らの横を通り過ぎようとしたが、ふと視線の先に映ったキャリーケースに思わず目を見開いた。
「…おい。何でここに俺のキャリーケースがあるんだ」
「あ、ユリオちょうど良い所に」
「まだ話は終わっとらんぞ、ヴィーチャ!来月はユーロが控えているというのに、そんな勝手が通用するとでも思っているのか!?ロシアナショナルも優勝したは良いが、休養前と比べたら全然だったぞ!」
「俺は、勝生勇利のコーチでもあるんだよ。先日のジャパンナショナルで、どうしても彼に確かめなければならない事が出来たからね」
「電話やメールで済ませれば良いだろう!」
「それじゃダメなんだ」
仄かに感情が篭ったようなヴィクトルの短い返答と、彼の左手が無意識に右手薬指に着けられた指輪を触っている事に、ユーリは数回目を瞬かせる。
「年明けには戻るよ。流石に俺も、ロシアナショナルの結果が決して良いものとは思ってないし」
「だったら!」
「それはそれ、これはこれ。じゃ、行こうか♪」
「はあ?何で俺まで日本に行かなきゃいけねえんだよ。てめえ1人で行ってこいよ」
「ユリオもジャパンナショナルの勇利の事、凄く気になってたよね?」
「なっ、べ、別に…あ、あれはただの敵情視察だ!ワールドで完膚なきまでにあいつを潰す為のな!」
GPFではSPでの貯金も手伝い結果的に勝利したものの、点差は0コンマ以下の僅差の上FSでは勇利の点数を越えられなかった事が、ユーリには不満だったのだ。
「おい、待てヴィーチャ!ユーリまで連れて行く気か!?」
「だから俺は行かねえって!」
「そう?じゃあこれ、なーんだ?」
口をハート型の形にしながらビクトルの右手がかざしてきたものの正体に気付いたユーリは、次の瞬間怒号を放つ。
「何でてめぇが俺のパスポート持ってんだよ!」
「旅は道連れ、っていうじゃないか。大丈夫、今回はショートステイだから」
「離せよ、おい!ふざけんじゃねえ何が道連れだ!つかこれ拉致だろ、誘拐だろ!」
喚くユーリの手を強引に取りながら、ヴィクトルは予めリンク前に待たせていたタクシーで、国内線の空港へと向かった。

(全部お前のせいだ、勝生勇利…!)

八つ当たりなのは承知しているが、余りにも理不尽過ぎる状況に、ユーリは内心で呪詛の言葉を叫んでいた。
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