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【YOI男主】激突!皇帝VS風雅人・長谷津冬の陣

第1章 プロローグ~side JAPAN~


全日本選手権終了後。

上林純は、年の瀬を勇利の実家である長谷津で過ごす為に、京都の自宅に戻るや否やその支度をいそいそと始めていた。
家族から渡すように言われた土産物や滞在中の着替えに加え、つい数日前までは大会を終えたら二度と履く事はないだろうと思っていたスケート靴を、スーツケースの中に詰め込む。
「長谷津でも一緒に滑ろう」と勇利に誘われていたのは勿論の事、子供時代からの顔見知りである西郡や、今では彼の妻である優子からも「娘達やリンクの皆も純くんに会いたがってるし、是非アイスキャッスルにも遊びに来て」と連絡を貰っていたのである。
冬でなければ愛車のコンパクトカーで、京都からのんびりドライブがてら長谷津に向かうのも悪くなかったが、流石に今回は空路を使って行く事に決めた。
しかし、純の実家である京都から伊丹の空港までは少し距離があるのと、福岡行きの便が早朝だったので、前日の夜は大阪の豊中市内で独り暮らしをしている純のコーチだった藤枝の部屋に泊まらせて貰う事にしたのだが。

「…僕言うたよな。明日の朝早いから、モノレールの最寄り駅が近いアンタの部屋に泊めてくれ、て」
背後から伸びてきた藤枝の大きな手指が、器用に純のシャツのボタンを外しにかかってきた事に、純は洗い物の手を止めると、顔を赤らめつつ首を動かして藤枝を睨んだ。
「お前こそ、今までのコーチと生徒の関係でなくなった俺の部屋に来るってのが、どういう事か判ってないみたいだな」
「そやし、今やらなあかん事と違うやろ!その手ぇ、離さんかい!ちょ、嫌やって…!」

全日本選手権のFS終了後に現役引退を宣言した純は、その夜滞在先のホテルで、初めて藤枝に抱かれた。
藤枝は、純が怪我の後スケートを再開した際、周囲のコーチに全て門前払いを食らった末にたどり着いた唯一純のコーチを引き受けてくれた男で、デリカシーはないがスケートに関してだけは誠実で、何より純を『元強化選手』『昔は勝生勇利と1、2を争っていた同期』という肩書など一切なしに、ありのままの姿を見てくれていた男でもあったのだ。
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