第8章 瞳が月のように光るから
夜中、急に目が覚め、すぐには寝付けない感じがして…
それでも寝付こうとしていたら、今度は喉が渇いて。
もう面倒なので、
眠くなるまで外の自販機で飲み物でも買って
気分を変えようと思った。
外の自販機で冷たいストレートティーを買った時、
人の気配がして目を凝らしてみると由佳だった。
由佳も暗い中よく見えなかったみたいで、
僕よりワンテンポ遅れて
「け…い…?」
と僕に気づいたようだった。
「そうだけど。何か飲むんデショ。何飲むの?」
「え…?えっと…レモンティー…」
レモンティーを買い
手渡すと月を隠していた雲が風で流れたのだろう
ありがとう。
と柔らかい笑顔の由佳が月明りに照らされて…
とてもキレイだった。
「蛍も寝れないの??」
「そう。一回起きたら寝付けなくなったんだよね。」
「ねぇ、どうせ眠れないなら昔話を聞かない?対して楽しい話じゃないんだけどね…。暇つぶし位にはなるかも…?」
由佳の顔はいつも見せているような
ヘラヘラした顔つきではなく
真剣な顔つきで僕を射るような瞳で見つめていた。
「昔話?いいよ。聞くくらいの時間はあると思うし…」
自販機の近くにあるベンチに二人で腰を掛けた。
月はまん丸く僕らを照らしていた。