第6章 左隣と君
スポーツ用品店を出たら由佳が僕の服の裾をくいっと引っ張った。
「ねぇ…」
「何?」
「えっと…喉乾いて…それで、何か…蛍と…一緒に…甘いもの食べたいなって…」
俯きながら気まずそうにボツボツと言う由佳はきっと精一杯伝えようとしているんだろうな…。
僕もちゃんと…
「別にいいよ。何が食べたいの?」
出来るだけ自分なりに優しく言ったつもりだ。
「え?あ、甘いもの…!!」
「甘いものって…、スイーツにも色々あるデショ?ケーキとか、アイスとかさ」
「んと…ケーキがいい!あとね、冷たい紅茶かコーヒーが飲みたい…」
「わかった。僕もそんなに詳しくはないから後で文句とか聞かないからね」
「うん!!やった!楽しみ!」
由佳の表情がみるみる変わって、
パァーっと明るくなった。
ニコリとして歩く由佳を見てホッとしたのも事実で。
最近できた流行りのオシャレなメニューで味も無難なカフェと、
古臭い昭和感が漂う、よく言えばレトロなケーキもコーヒーも美味しい喫茶店か悩み
美味しいケーキとコーヒーを置いている喫茶店をチョイスした。
由佳は、店内に入ると年代物のディスプレイや、置物を楽しそうに見て
「蛍!すっごく素敵なところだね!」
なんてまだ何も口にしていないのにご満悦で。
こっちで正解だったなぁ。と思いながら
由佳は、チョコケーキにアイスコーヒー、僕はショートケーキとアイスコーヒーを頼んだ。
ケーキとコーヒーが運ばれてきて、それらを口にした由佳はすごく嬉しそうに
「ケーキもコーヒーもどっちも凄く美味しい!!流石蛍だね!」
「はいはい。わかったから静かにたべなよね。」
いつも通りなやり取りに安心して…。