第7章 巌窟王
「ヒャ、ア゛ア゛ハハハハハハハハ!!!!!」
「!?」
不気味な笑い声を上げながら、私とアヴェンジャーの前に現れたのは、キャスター/メフィストフェレスもどきだった。
息つく暇もないとは、このことだ。
メフィストフェレスもどきは、その大きな鋏(ハサミ)を振り回しながら、襲い掛かって来た。キャスターでありながら、これほど大きな獲物を振り回すその姿は、紛れもない「恐怖の具現」だ。でも、アヴェンジャーになら、勝機はあるはずだ。
メフィストフェレスもどきは、大きな鋏を振り回し、アヴェンジャーに距離を詰められまいとする。アヴェンジャーはそれを掻(か)い潜(くぐ)って、間合いを詰める。通常の戦闘であれば、無理をしてまで相手と距離を詰める必要は無い。しかし、先程といい、相手はキャスターだ。間合いを空け過ぎれば、強力な魔術が飛んで来かねない。そうなれば、真っ先に不利になるのはマスターである私だ。威力の低い範囲攻撃であっても、マスターである私には大きな脅威となる。だからこそアヴェンジャーは、間合いを詰めるしかないのだ。
やがてその攻防戦も、決着がついた。メフィストフェレスもどきの鋏は、アヴェンジャーの手によって弾き飛ばされ、宙を舞った。
「――――トドメだ。」
アヴェンジャーの鉤爪(かぎづめ)が、メフィストフェレスもどきを貫こうとした時、アヴェンジャーの身に異変が起こった。
「……、っ、ぁ……、な、に……!?」
喉からやっと絞り出されたような、アヴェンジャーの声。アヴェンジャーの体は、ぴくりとも動かない。その足が、床に固定されているかのようだった。見れば、アヴェンジャーの足元で、先程玉藻の前もどきが落とした呪符が、鈍い光を放っていた。あれは、拘束の呪縛……!
これ幸いとばかりに、メフィストフェレスもどきは鋏を自らの手に戻し、アヴェンジャーへと斬りかかろうとした。