第7章 巌窟王
アヴェンジャーは、すぐさま私の元へ戻ってきてくれた。あぁ、なるほど。この状況は、アヴェンジャーの宝具によるもの、ということか。だから、『対魔力』を調べるように、私に言ったということだろう。
「ハハハハハ! 見ろ、マスター! なかなかの地獄だろう!」
アヴェンジャーは愉快そうに、屋上からその光景を見下ろしている。どういう仕組みなのかは分からないけれど、またアヴェンジャーに助けられたということだけは、理解した。
「しかし、ここで見ているだけという訳にも、いかぬようだ―――――なッ!」
「!?」
アヴェンジャーは、屋上の扉に向けて、ビームを数発、放った。
私には、気配を察知することすらできなかったが、アヴェンジャーの目は誤魔化せなかったらしい。
見れば、屋上の扉付近にいた玉藻の前もどきが、呪符を構えている。キャスター/玉藻の前。本来ならば、高ランクの神性を保有する、強力な呪術師だ。
「ギ、ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!」
耳をつんざくような魔の咆哮を上げて、氷の魔術を繰り出してきた。狙いは当然、私だ。
アヴェンジャーはその氷塊を一撃で砕き、瞬時に間合いを詰める。キャスターの多くは、接近戦を不得手とする。それが、このシャドウ・サーヴァントもどきにも適用されるかは不明だが、アヴェンジャーはそのまま、高速での連続攻撃を叩き込んでいた。玉藻の前もどきは、呪符で対抗しようとしていたが、それらは全てアヴェンジャーにより阻止され、何の効果も発動することもなく、地面に落ちるばかりだった。
「ギ、ア゛、ア゛ア゛ア゛ア゛……、ア゛ア゛……」
そして、玉藻の前もどきは、アヴェンジャーの近接攻撃ラッシュの前に消え去った。
「ありがとう、アヴェンジャー……。」
「問題無い。この程度―――――」
「アヴェンジャー、後ろ!」