第7章 巌窟王
『巌窟王(モンテ・クリスト・ミトロジー)!!!』
黒い炎が増大し、空中から敵の大軍に降り注ぐ。それはさながら、小さな黒い流星が、地上に落ちていくような、神秘的な光景だった。
アヴェンジャーは、空中でその身を翻(ひるがえ)し、大軍ひしめくグラウンドに着地した。派手に着地したのだ。正直、どうぞ狙ってくださいと言っているようなものだと思った。
『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!』
エリザベートもどきが絶叫しながら、槍を構える。そして――――――
「え?」
近くにいたブーディカもどきの体を、貫いた。
その光景に、私は目を疑った。いや、それだけじゃない。このグラウンドのそこらかしこで、似たような光景が広がっている。
「なっ……!?」
その光景は、正に異様だった。ジル・ド・レェもどきが、フェルグスもどきと剣を交え、その横ではジャックもどきが、カーミラもどきに斬りかかっている。カーミラの持つアイアン・メイデンの中からは、マリー・アントワネットもどきの腕がはみ出している。さらには、他のシャドウ・サーヴァントもどきが落とした武器を、ランスロットもどきが手にして、無軌道に暴れまわっている。ランスロットもどきの放つ、凄まじい攻撃の中で、何体かのシャドウ・サーヴァントもどきが霧散していくのが確認できた。しかし、周囲のシャドウ・サーヴァントもどきが消滅したところで、ランスロットもどきは、その攻撃の手を止めることが無い。新しい武器を手にしては、嵐のように暴れている。キャスターらしい者ですら、攻撃魔術を駆使しているのか、数体の敵を纏めて屠(ほふ)っている者もいる。何という渾沌(こんとん)とした状況だろうか。簡単に言えば、シャドウ・サーヴァントもどきが、シャドウ・サーヴァントもどきと、潰し合っている。本気で、殺し合っている。その凄惨な光景に、私は言葉を失った。