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恩讐の花嫁 【Fate/GO 巌窟王 夢小説】

第3章 憎悪





「……下がっていろ。」
 突然、アヴェンジャーが臨戦態勢を取った。その声は平生のそれよりも低く、トーンが下げられている。
「……。」
 緊張が走る。
「――――――!?」
 ダークグレーの海から、次々に、人間のようなものが出てくる。異様に過ぎる光景に、私は思わず絶句してしまった。3人、5人、10人……、15人……、20人……。あれよという間に増えて、ざっと30人以上にもなった、人間のような存在。よく分からないけれど、さっきの子どものような存在と、雰囲気が似ている。恐らく、同じような存在なのだろう。その、人間のような存在達は、およそ人間を逸したスピードで、こちらへ向かってきた。その不気味な光景に、息を呑む。老若男女入り混じった人間のような存在たちは、不健康な茶色の肌に、濡れた頭髪、ボロボロの服をまとっており、少なくとも私には聞き取れない声で何やらブツブツと呟いているらしかった。

「囲まれたな。」
「うん……。」
 人間のような姿をした存在に囲まれている。その光景は、不気味にして異常だった。人間のような存在達の爪は、皆不気味なほどに伸びきっており、その手には農作業具やナイフ、斧など、凶器になり得るものが握られていた。だがそれよりも恐ろしいことは、この人間のような姿をした人間達からは、はっきりと、明確な憎悪を読み取れてしまうことだ。そのあまりの憎悪に、頭がクラクラとしてくる。雰囲気に押されてはいけないと分かっていながらも、それを完全に受け流すなんてことは、私にはできない。

「クハハハハ!――――どうする、マスター!? こやつらは、間違いなくお前を殺しに来たと見える! 大人しく首を差し出し、殺させてやるか―――――!?」
 アヴェンジャーの声で、我に返る。混濁しかかっていた意識が、一気に引き戻される。
「い……、いや……! 嫌だッ!!!!!!」
 思わず、叫んでいた。

「―――――クク、ハハハハハハ!!! そうだ!! それで良い!!!」
 アヴェンジャーは、外套をバサリと翻した。上昇する魔力の圧。マスターの私でさえも、こんなふうに近くにいては、立っているのがやっとなぐらいの、力の滾(たぎ)り。アヴェンジャーが宝具の真名開帳を行っているわけでもないのに、こんなにも迸(ほとばし)っている、力の本流。黒炎が、煌々と燃え盛る。


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