第17章 第3部 Ⅲ ※R-18
夜、アヴェンジャーと情報整理をする。
「えっと……、今日、調べたエリアが、花魁……だっけ? とにかく、すごいトップクラスの女の人たちがいるエリアと、私がいつもいるこの辺り。でも、人間じゃない気配のする存在がいる以外に、不審な点無し……。改めて、茶屋町の残りも調べてみたけど、何も無かったね……。」
「であれば、この遊郭の更に奥へ進むしかない、ということだな。」
「え?」
そんなものが……あ、いや、この棟の北側、つまり大門の反対方向に、別の棟があるのは知っていた。しかし、北にあるとあって、陽の当たらないそこは、同じ敷地内にあるにもかかわらず、どうにも暗い印象を与えるものであり、およそ、真っ当な人間を寄せ付けない雰囲気なのだ。それに、私が普段いる棟からは、少し歩かなければならない。しかし、今のところ、探索をしていても有力な情報をあまり得られていないのだから、そこへ進むしかない。だが、嫌な予感だけがべったりと、私の脳の奥に貼りついている、そんな感じだ。
「気が進まないか? マスター。」
アヴェンジャーにも、私の感情が伝わってしまっていたらしい。でも、ここでじっとしていても、事態が好転することなんて有り得ない。
「ううん。私は、絶対にカルデアへ戻る。行こう。」
「良い眼だ、マスター。では明日に、向かうとしよう。それまで精神を休めておけ。恐らく、随分と醜悪なものが詰まっているであろうからな。」
「……うん。」
どうやら、アヴェンジャーも、あの棟からは何か良く無いものを感じ取っているらしい。アヴェンジャーはサーヴァントだから、私以上に、何かを感じ取っているのかもしれない。
「おやすみなさい。」
恐ろしくないのかと言われれば、勿論怖い。でも、私にはアヴェンジャーがいて、私と共に在ってくれる。アヴェンジャーとならば、何度だって挑める。
「ありがとう、アヴェンジャー……。」
私は小さく呟いて、仮初めの休息へと、この身を沈めた。