第5章 Happy birthday! ~波乱の横恋慕編~
***5月9日***
信長が無事に帰還したものの、たまっていた仕事やその他の政などの職務でなかなか一緒には過ごせない麗亞。今日も針子の仕事で頼まれた服を各所に届け、織田軍の世話役という事で、各々の屋敷に書状などを配って回っていた。それもようやく一段落ついて。最後の屋敷から出てしばらく歩いたその時。後ろから聞き覚えのある声に呼び止められた。
?「麗亞さん。」
振り返るとそこには佐助。
「あ、佐助君!久しぶり。どうしてた?暫く見なかったね。」
眼鏡をひとさし指で上げる仕草をして居住まいを正す佐助。
佐「あぁ、すまなかった。御無沙汰してしまって。でも一度君の部屋に行ったことがあったんだ。ただその時には君が居なくて。」
「そうだったんだ、いつだろう?今織田軍いろいろバタバタしちゃって。」
佐「あ、お構いなく、信長様のお誕生日が近いから仕方ないよ。皆さん色々と準備しているようだし。」
それを聞いて少し驚く麗亞。
「どうして・・・それ?」
佐「あぁ、気にしないで、俺歴史ファンとしてはやはり武将達の誕生日は網羅しているんだよ。やはり信長様のお誕生日は大事だと思う。」
「そっか、そうだったよね、佐助君知らない事ないもんね。」
それを聞いて佐助が軽く首をふる。
佐「いや、知ってることだけしか知らないし、君の誕生日なんか知らなかったし。」
それを聞いて目を見張る麗亞
「えっ?」
ハッと気づいたが、申し訳なさそうに佐助は告げた。
佐「その君の部屋に行った時に机に君のカバンが広げてあって、大事な物だからとカバンにしまうときに丁度運転免許証もあって。」
「そうだったんだ・・・。」
佐「すまない、勝手に見てしまって。悪気はないんだ。大事なものだから無くしてはいけないと思って。でも、君が信長様の誕生日の次の日がお誕生日だったなんて。凄いな。俺としては羨ましい。」
「ふふふっ、そんなに凄いもんじゃないよ。たまたまだって、同じ日なわけじゃないし。」
少しはにかみながら麗亞は言う。そんな麗亞に佐助は小さな包みを渡した。
「これ、何?」
佐「僕からのささやかなプレゼント。まだ早いけど次いつ会えるか解らないし。大したものじゃないけど。」
その佐助の心遣いに思わず顔が綻んだ。