第2章 Happy birthday!~信長様奮闘編~
次の日、前日の夜に支度を済ませていた信長一行は、すぐさま安土へ向けて発った。見送りは大名と数名の家臣のみであった。静姫は信長を恐れ部屋に籠っているようだ。
長「短い間だが世話になった、次に来る時にはよもや軍を上げてくることが無いようにせいぜい領地を栄えさせる事だ。お主も我が織田家の傘下なら、それらしい振る舞いをせねばどうなるか・・・。」
ニヤリと含み笑いを漏らす信長に、大名は冷汗を流す。
大「しかと申し付かりました。」
そう言うと深々と首を垂れた。そうして信長達は安土へ向けて帰城の途に就いた。
家「つまらない事に時間を使ってしまいましたね。」
長「全くだ。この事をあやつが知ったらどんな顔をするか。」
ぷりぷりと怒って無視しようとする麗亞の顔を思い浮かべ、なんとなく心の中に温もりが戻ったように思えた。
長(やはりあやつが居ないと、俺の心は寒いままだ。)
はやる気持ちを抑えつつ、安土へと急ぐ信長だった。
昼過ぎに、途中休憩に立ち寄った領地の町で、小さいながらも市をしていた。信長はふとそれが目に入り家康たちに告げた。
長「少し馬や家臣共を休ませる。」
そういうと。木陰になっている場所で馬を降りた。
他の者はその場所で少し暑くなってきた日差しを避け休息を取り始めた。
そのまま信長は、町の方へと歩いていく。それを見た三成は慌てて声をかけた。
三「信長様どちらへ?」
長「少しあそこの市を覗いて来る。」
家「それなら私が一緒に参ります。」
長「好きにしろ。」
悠然と歩いていく信長の少し後ろを家康がついて行く。
家「三成はここで皆の様子を。もし変わったことがあればすぐに・・。」
三「分かりました。お気をつけて。」
笑顔で家康に答える。
信長は市を見ているうちに、なにやら変わった品を置く露店を発見する。すぐさまその店の前に行き置いてある品を吟味した。すると、その中でもひときわ目に入ったのが緑石の腕輪であった。
長「店主よ、これは?」
店「お目が高いですね、これは越後より出土した翡翠です。海の向こうの唐土という国では正妻に翡翠を与えると言われているそうで。更に持ち主を守り、災いから救ってくれるとも言われております。」
長「ほぅ・・・。」
信長はなんとも興味深い石を見つけたものだと、すぐさまそれを買い求めた。