第9章 政宗の花嫁
無言の抵抗を 続ける白雪に
畳み掛ける様 甘い言葉を囁き続ける
「俺の名を呼ぶ お前の声が聞きたい」
「俺を欲しがる お前の顔が見たい」
「俺に欲情する お前の匂いを嗅ぎたい」
「俺を求める お前の舌を絡めとりたい」
「俺に乱れる お前の躯が……」
突然 白雪が政宗の胸にしがみついた
政宗が喉の奥で くっくと笑う
「なんだ もう降参か」
「っ…もぉ 政宗の意地悪」
「違うだろ 可愛がってるんだ」
「そんなの 屁理屈だよ」
「理屈も屁理屈もない」
白雪の顎を掬い上げ
政宗の方を向かせた
視線が絡み合う
鼓動が高鳴る
「俺は お前に狂ってる」
青い瞳に熱が宿る
白雪の瞳が 政宗の熱で溶けていく
「それでも いいか」
これ以上ないくらい甘く囁いた
蕩けた顔で 白雪が頷く
「政宗しか 見えない…から」
「…俺しか 見るな」
「っ…」
しがみつく白雪をそっと離し
白雪の前に 片膝を突く
細い指を絡めとり
白雪を見つめながら告げた
「生涯 お前だけを愛する
側室は 持たない
子が出来なければ 養子を持つ」
白雪が息を詰めて
政宗を見つめる
「俺の…妻になれ」
溢れ落ちる涙で
花達が歪んで見える
一度は諦めた 望んだ未来を
政宗が 与えてくれる
あまりの幸福に
身体が震えた
「……返事は?」
促され やっとの思いで
掠れた声で告げる
「政宗しか…いらない……から」
「政宗の……お嫁さんに…して」
白雪らしい率直な答えに
政宗が優しく微笑む
「……承知した」
唇が 触れ合う直前に囁いて
深くまで 味わう様に 口付けた
花達が 鳥達が 風が 太陽が
祝福するように 二人を見守り続ける
青葉の白き庭で
白雪は 政宗に捕らわれ
政宗は 白雪に捕らわれる
二人の心が 甘く絡み合い
花のように 蜜を垂らして
甘く 甘く 匂いたつ
溢れ出た愛が 溶けて
互いの胸を 辿り伝って
互いの愛に 溺れていく
目の眩む幸福と官能に
支配される喜びに浸りながら
白雪はゆっくりと躯を開き
政宗の激しい熱を 奥まで受け入れる
尽きることの無い
永遠の愛を誓い
二人の熱が晩夏の
空に高く 溶けていく