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イケメン戦国~捕らわれた心~

第9章 政宗の花嫁


女達で賑わう 針子部屋から
そっと抜け出した白雪

仕事に集中出来ず
政宗に与えられた 中庭を訪れた

玉簾や折鶴蘭など
初夏の白い花々が 白雪を
甘い香りと共に 優しく迎える

水辺に足を運べば
純白の睡蓮が水面を
美しく飾っていた

(政宗…池にまで白い花を…)

確かな愛に胸を熱くするも
言い得ぬ感情に 苦しめられる

(仕方がないじゃない
何処から来たかも 知れない女より
確かな後ろ楯のある姫君と
結ばれるべきなんだから)

(この時代
側室って大切にされてる筈よね
現代の不倫とは違うんだから…)

何とかして自分を
納得させようとしていると

カサッ

物音にはっと辺りを見回した

「あの…すいません
お花がとても綺麗だったので…
人がいるとは……」

白雪から少し離れた所に
豪華な晴着に身を包んだ
少女が立っていた

(この娘…)

この幼さの残る少女が
政宗の隣で 生きるのかと思うと
胸がキリキリと 締め付けられる

頭では理解していても
心が付いてこない

(私と政宗の庭なのに……)

唇を噛み 言葉を呑み込む
少女から視線を背け 黙礼すると
白雪に出来るのは
その場から 逃げ出す事しかなかった

中庭を走り抜け
暫く前から 建て増している
御殿の前に差し掛かる

少し離れた場所で大工達を
見つめる重臣と家臣ら

走って来た白雪と視線が合う
家臣がにこやかな笑顔を向け
話しかけてくる

「白雪様 どうされました」

「何かお急ぎかな」

政宗と同年代の家臣と
一回り程歳を重ねた重臣

二人とも いつも白雪に
良くしてくれる

「あ…いいえ…大分出来上りましたね」

「何分城も 手狭になりましたから
まだまだ拡大する予定です」

「この分なら 来春の婚儀までには
出来上りましょう」

言葉を失う白雪

(来春…
来春には政宗は あの少女と結婚するんだ
私…ここに移り住めって…事なのかな
時代劇とかだと 側室ってそんな感じだよね)

「…そうですね」

「領地も拡大し 家臣もどんどん増え
政宗様は 先代とのお約束を着実に
叶えておられます 我らも微量ながら
お力添え致しますから」

「白雪様も 政宗様へお力添え下され」

その言葉に 胸が詰まる
諦めたように 笑顔を作り頷くと
静かに その場を後にした

(側室として 政宗を支えろって事か…)
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