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イケメン戦国~捕らわれた心~

第8章 織姫の涙


馬上の政宗は
修羅の如き殺気を身に纏い
その瞳は怒りに燃え
見るものを総毛立たせる

あっという間に門前に到達した
伊達軍が取り囲むように
立ちはだかる

白雪の姿を認めた政宗が
無事を確認するよう
視線を向ける

「白雪…無事か」

「うん 大丈夫 謙信様と佐助君に
助けて貰ったの」

「なっ…に?」

その場に佐助の姿を確認すると
僅かに驚きの表情を作る

「…どうなってる」

「ご無沙汰しています 政宗さん」

深々と頭を下げる佐助

「今回のことも含め
説明させて下さい
戦うつもりはありませんので」

暫し黙考する政宗を
冷たい雨が濡らしていく

「……分かった だが」

鋭く睨むと

「白雪は返して貰う」

「勿論です」

佐助がそっと白雪の背を押す

「っ…政宗っ!」

走り出し 細い腕を伸ばす
同じ様に走り出した政宗が
その身をしっかりと抱き留めた

白雪の声が
匂いが
体温が
呼吸の音ですら
政宗の身体に浸透し

止まっていた時間が
動き出す様に
政宗の心が動き出す

白雪が側に居なければ
この身は空っぽなのだと
改めて知らされる

人目を憚ることなく
口づけた時
手首の傷が目に留まる
そっと 両手首に口づけた

ギロリと佐助を睨む

「……説明……してもらおうか」

すると
それまで言葉を発しなかった
謙信が政宗の前に進みでた

一瞬で空気が変わる
張り詰めたそれが
雨をも忘れさせる

突然 謙信がその場に膝を突く
両方の家臣が響動めく

「?」

怪訝な面持で
白雪を胸に抱いたまま
黙ってそれを見つめる政宗

「此度は
不徳の致すところ我が家臣が
過大な迷惑を掛けた この通り詫びる」

「……どう言うことだ」

佐助が謙信に倣い
政宗の前に膝を突いた

「実は…謙信様の機嫌を取ろうと
画策した者が白雪さんを拐かして
政宗さんを誘き寄せようと…」

「策は成功したな
実際こうしてここにいる」

「…ですがその様な下劣な
真似を謙信様は好みません
先の者はこちらで処罰致しました」

ちらと屍の山を視界の隅に置き

「あれか……手間が省けたな……」

「高潔と誉れ高き上杉謙信が
敵の女を拐かすとも考えられん」

家臣らの目前で敵に
跪つき詫びを入れるなど
謙信の腹づもりも分りかねる

例え家臣が勝手にした事であれ
白雪を解き放ち その後戦う事も可能だ
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