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イケメン戦国~捕らわれた心~

第8章 織姫の涙


「名前で呼び合うと
仲良くなれるんですよ」

面喰らった顔で白雪を
まじまじと眺める

「仲良くなる必要がない…」

「人の人たる所以は
感情を交わせることでしょう?」

「……」

理解できないといった
表情で黙り込んだ謙信に
白雪は言葉を続ける

「一期一会と言うじゃないですか
折角 出会ったのだから
仲良くしましょう」

花が咲くように微笑む白雪

「っ…なにを呑気な」

呆れる思いと共に
言い得ぬ感情が胸に灯る

「時と場合によるけどね」

さらりと佐助に言われ
確かにと呟き笑い合う二人

「佐助くん…戻ったんだね」

「あぁ 信頼出来る後輩に
後の研究を任せてきた」

「白雪さんが
旅立った二週間後に
磁場の乱れを発見して…
謙信様の所に戻ったんだ」

「頼んでなどいないがな…」

謙信はふんと鼻を鳴らし
そう言って立ち上がった

「そろそろ なのだろう」

「はい 行きましょう」

白雪も慌てて立ち上がる
二人の後について歩き出した

長い廊下を出て外に出る
謙信の家臣達が膝をついて
列をなしていた

ふと横をみれば
幾人かの男が
無造作に重なりあい
小さな山を作っている

生きていないことは
明らかだった…

思わず目を伏せた白雪に
謙信が声を掛ける

「あまり見るな…
女子の見るべきものでは無い」

「……はい」

謙信の家臣達が
驚きの表情で二人を仰ぎ見た

「……あの 何か?」

白雪が声を掛けると

「しっ失礼致しましたっ」

慌てふためきひれ伏した
佐助が捕捉する

「謙信様が 女性と話すなんて
非常に稀だから 驚くのも無理はない」

「そうなの?」

驚いて謙信を振り返る白雪

「お前のような豪胆な女は稀だ」

よく聞く台詞を耳にして
溜め息をつく白雪

「……よく言われます」

佐助が笑いを噛み殺していると
空から雨粒が落ちてきた

「……降りだしたか」


サァァーーーーー


辺りを雨粒が濡らしていく
誰ともなく空を仰ぎ見た
その時 蹄の音が遠くから
響いてきた

「……来たか」

幾何かすると
漆黒の甲冑を身に纏う
伊達軍の精鋭部隊が
馬を操り駆けてくるのが見えた

白雪の眼に
昨日 別れたままの格好で
疾走する政宗の姿が
飛び込んで来る

「っ…政宗っ!」

思わず駆け寄る白雪を
佐助が制した

「待って白雪さん 危険だ」
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