第7章 紡がれる日々
数日降り続いた 雨があがり
城内を吹き抜ける風が
肌に心地よい
白雪は縫い上げた
夏物の夜着を持ち
針子部屋から
政宗の部屋へ
脚を運んでいた
外から聞こえてくる
威勢のいい声に目を向けると
中庭をぐるりと囲む様に
杭が打たれその杭に白い布地が
張り巡らされている
(なんだろう?)
歩みを止めて 中庭を眺めると
職人風な男達が 大勢出入りしていた
(何か作ってるのかな?
あの白いのは現代の
ブルーシート的なやつかも…
この時代でも安全対策とか
ちゃんとしてるんだ…)
「白雪様 こちらでしたか」
名を呼ばれ振り返ると
女中の百合が小走りで近づく
「あ お百合ちゃん
ごめん 探してた?」
「針子部屋かと思っていたので…
すぐ見つかって良かったです」
「どうしたの?」
「中庭は危険だから暫く
近付くなとの御達しで…」
二人とも中庭に顔を向ける
「危険て…」
「恐らくは…
単なる庭木の入れ替えですが
政宗様は 白雪様が不用意に近付いて
怪我をされては困る…と」
「えぇっ…子供じゃあるまいし」
「ふふ…政宗様は本当に 白雪様を
大切に大切に しておいでですから」
「だからって…」
「ちょっと 度が過ぎますね」
くすりと
顔を見合わせる二人だった
それから数日後
白雪が針子部屋で
仕事をしていると
「白雪いるか」
政宗が呼びながら入ってくる
手を止め返事をすると
「ちょっと来い」
腕を掴まれぐいっと
引き上げられたと思うと
政宗の腕に収まっていた
「悪いが借りていくな」
政宗が針子達に告げると
くすくす笑いながら
「はーい ごゆっくり」
と返ってくる
白雪は恥ずかしそうに
ひらひらと手を振った
白雪を抱いたまま
すたすたと歩く政宗
「……重く…ないの?」
予想外の言葉に
思わず吹き出す
「お前がか?…甲冑より軽い」
妙に納得した顔で 黙る白雪に
増々笑いが込み上げる
(本当に分りやすいな こいつ 可愛い)
顔を屈め額に口付ける
余りに幸せそうに見上げてくるので
瞼に耳に頬に口付けの雨を降らす
「駄目だよ…廊下なのに…」
とろんとした
瞳を伏せて呟くから
余計に苛めたくなる
「あーそうだった
白雪は誰も居ないところで
いっぱいするのが好きだったな
待ってろ 後でしてやるから」
「っ…もぉ意地悪!」