第7章 紡がれる日々
「そっか…戦い方と癒し方
両方教わるんだね
政宗も戦の時…家臣の人達
手当てしてたもんね」
「…武士なら皆
ある程度の手当ては心得てる」
「私も 勉強してきたよ」
「は?」
「政宗の役に立てるように
いろいろ勉強したのに…
早速 足手まといだね」
肩を落として しゅんとする白雪
「そんなことないだろ まぁ確かに
お前が居なかったら早駆けして
六日と経たずに奥州入りしたろうが…」
「その代わり 山の新緑に気付く事も
藤の美しさに眼を奪われる事も
こうしてゆっくり湯に浸かる事も無かった」
「全てお前が与えてくれた
お前と紡ぐ時間の全てが俺の宝だ」
「政宗……」
隠せない恋情の宿った瞳で見つめられ
一度閉じ込めた熱が頭をもたげる
(あぁ…ったく…そんな眼で見て…
駄目だ…これ以上こうしてたら襲っちまう)
「のぼせる前に出るぞ」
「あ…うん…そうね」
白雪に背を向け先に上がる
天を仰ぐ政宗の自身を
見せたくなかった
急ぎ着物に袖を通す
(湯が白濁の湯で良かった…)
ちらと白雪を見ると
上気した肌が全身を桃色に染め
身震いすらほど美しい
(はぁ………蛇の生殺しだな)
(奥州へ帰るまで持つのか?俺は)
そんな心中を 知るよしもない白雪
湯上がりの匂い立つ色香を
惜しげもなく振り撒いて
「気持ちよかったね
政宗に揉んで貰って
身体が軽くなったみたい」
と呑気に笑っては
政宗を困らせるのだった
(耐えろ…俺)
夕餉の時間となり 心尽くしの善を平らげ
横になって暫くしたら 湯に浸かる
今度は髪を清める白雪を
広縁に寝そべって眺める
「…恥ずかしいんですけど」
困り顔の白雪が可愛くて
眼を背けてやれない
「そう言われると
恥ずかしがってるお前の顔
もっと見たくなるな」
にやにやと意地悪く笑う
政宗の顔めがけて 白雪が湯を掛ける
「わっ…やったな」
きゃあ きゃあ騒いで
湯を掛け合い 笑いあって
闇が深まる前には
白雪は政宗の腕の中で
すやすやと寝息をたてていた
眠る白雪の額に優しく口付ける
愛していると囁けば
夢の中にいるはずの白雪が
幸せそうに微笑んだ
(…って…眠ってても可愛いのか
どうなってる こいつは…)
溜息をつき 褥からそっと這い出る
広縁に腰かけ 黒い空に浮かぶ月を見上げた