第7章 紡がれる日々
奥州への長い旅
筋肉も脂肪も無い白雪にとって
馬上で連日を過ごすのは過酷らしく
四日たつ頃には身体が悲鳴をあげた
家臣数名を残し
他の者達は先に向かわせる
白雪の身体を気遣い湯治場へ
寄りながらの帰還となった
「大丈夫か?」
「うん…ごめんね…迷惑かけちゃって」
「何言ってる 謝るのはこっちだろ
やっぱり駕籠を付けるべきだった…」
「私…政宗の馬がいい」
「身体中 痛くて動けなくなるのにか?」
からかう様に笑うと
ギュッと政宗の胸元を掴み
「ここがいいの…
我儘だって分かってるけど…」
(あぁ…まただ
その 恥ずかしくてならないのに
俺が欲しくてなりませんって顔…
そんな顔されると……堪らない)
「そんな可愛い事言ってると
俺に襲われてもっと動けなくなるぞ」
「っ…もぉ!」
真っ赤になって俯き
回された細い腕に 僅かに力が込められた
(あぁ…また…底なしに可愛いな…くそっ)
政宗が口に出来ぬ悔しさに
唇を噛むと家臣が大きな声をあげた
「おっ 見えてきたぞ」
声に誘われ目をやれば
川沿いに湯けむりが見える
近くには数件の宿が並ぶ
中でも一番大きな宿を指すと
お供の一人が宿へと馬を走らせた
「以前 家康に聞いた湯治場なんだ」
「家康に?」
「あぁ 傷や身体の疲労に良いらしい
それに……ここは囲いを付けて回りから
見えなくしている温泉があるって話だ」
「えっ?そうなの?」
白雪が意外そうな顔をする
「どこぞの大名が病弱な妻を
湯治させる為作らせたって話だ」
「へぇ 優しい旦那様だね」
「なんだ 欲しいなら奥州に
お前専用のを作ってやるぞ」
「えぇっ さっ流石にそれは」
「……相変わらず物欲の無い奴だな」
他愛ない会話を交わすうちに
宿主と話を付けた家臣が 戻って来る
泊まれる事になり ホッとしている様子の白雪
(やはり相当無理してたのか…)
先に馬を降り 白雪を抱き下ろす
一歩進み出て 直ぐ様よろける
辛いはずなのに笑う白雪
「あっ……ぜっ全身の筋肉が痛いっ
…ふふ凄い こんなの始めて」
「ふっ…何笑ってる
無理するな ほら」
横抱きにして宿に入り
上がり框に座らせ女中を待つ
桶を持って 足を洗いに来た女中から
桶だけ受け取り 白雪の足元にしゃがみ込む
「政宗?自分で出来るから…」