第7章 紡がれる日々
安土で過ごして数日
奥州へ戻る準備を終え
いよいよ安土を後にする
光秀と家康も同じ日に
領地へ戻ることになり
各々が日常を取り戻す
そもそも 二人は一年前に
領地へ戻っていて 京に居たのは
本能寺再建の祝いと
政宗を労う為だった
図らずも
白雪を一緒に迎える事となり
帰郷を遅らせて 数日を共に過ごした
いつの間にか桜は緑の葉を付け
山では藤の紫が眼に美しい
「じゃあ 行きます」
「っ…おい!家康待て!素っ気ない奴だな」
「秀吉さん…なんです?」
「寂しくなります」
「三成 お前に聞いてない」
「騒がしい奴らだ」
「光秀様もご出立で?増々寂しくなります」
「光秀 御館様には挨拶したのか?」
「秀吉 少しは休んだらどうだ?」
「話を逸らすな!」
「ふふっ……相変わらず仲いいね」
「‼」
門前で賑やかに言葉を交わす一行が
その涼やかな声に振り替える
「白雪 準備出来たのか」
「俺もいるぞ」
白雪の後から現れた政宗に
秀吉が穏やかな笑みを見せる
「やっとだな…政宗」
「あぁ…世話になった」
各々と短い挨拶を交わし 城を仰ぎ見る
天守から信長が悠然とこちらを眺めていた
静かに頭を下げると
その場にいた誰もがそれに倣う
「お元気で!」
「安息でいろよ」
笑顔で別れを告げ
いよいよ 新たな門出の始まり
以前とは比べ物にならない程
彩色に彩られた日々
最愛の人を……
素直で豪胆で
この世で 唯一
愛さずにはいられない女
白雪を連れて帰る わが城へ