第6章 貴方に夢中~短編集~
~政宗の御殿~
まだ朝早い刻限
文机に向い 筆を進め
書状に目を通す
真摯な面持で政務をこなす
政宗を 髪を鋤きながら鏡越しに
盗む様に見つめる白雪
自分に視線を移すと
政宗に聞こえないように
極僅かに溜息をつく
(私 どうしちゃったんだろう
あんなに乱れて 政宗に命令されて…
それが気持ちいいなんて…)
(政宗…呆れてるかも…)
じっと自分を見つめ
また視線を政宗へ移した時
「気に病むな」
突然声を掛けられ ビクンッと肩が跳ねた
「えっ?」
振り返った白雪にむけ
手元に視線を落としたままで
政宗が言葉を続ける
「気に病むな と言ってる
意地悪するのが 好きな俺と
俺に意地悪されたくて仕方ない お前
丁度いいだろ?」
目を見開き 驚愕して言葉を失った白雪が
ぱくぱくと口を動かす
そんな白雪を見た政宗が
喉の奥で 不敵に笑い言葉を繋ぐ
「違うか?」
「…っ違わ…ないっ…」
思わず政宗に攻め寄り胸元を掴む
「っ…なんでっ?何でわかったの?」
「ふっ…」
余裕の笑みを浮かべ 頬を撫でる
さらさらと 政宗の指を通る髪に口付け
白雪の瞳を覗く 急に真面目な表情をすると
「愛してるから」
白雪の澄んだ瞳を
透明な滴が濡らしていく
「ふっ…泣くな…愛してるから」
呆れたように笑い 優しく頬を包まれる
「だっ…て…嬉しくて…とまらないもの」
全てを包み込む 政宗の愛に
爪先から溶けていく 膝から肩へ
愛が躯を満たしていく 髪の先まで愛されて
溺れるように 息をつく
それすら奪われるような深い愛に
身震いしながら 落ちるように
政宗に 蕩けていく