第5章 新たなる日々
夕焼けに
空が染まる頃
三成が白雪の部屋に
夕餉を知らせに行くも
一向に戻らない
仕方なく秀吉が
白雪の部屋を訪れる
「三成…なにしてる?
白雪達居ないのか?」
「あ…秀吉様…
いらっしゃるのですが…」
襖の前で思案する
三成の隣に立ち並び中を覗く
畳の上…身体を寄り添わせ
顔を並べなんとも
幸福そうに眠る二人
「いかがいたしましょう?」
「…仕方ない
後で届けてやるとするか」
そっと襖を閉め足音を潜めて
そろりそろりと立ち去る
三成と秀吉の様子を
廊下の向こうから眺める家康…
「ぷっ…なにしてんの…あれ…」
思わず吹き出した口元を
慌てて手で隠し
何事もなかったように
すたすたと歩き去っていった
二人が目覚めたのは
数刻の時が経ち
辺りが闇に染まってからだった
行灯が灯され
二人の身体に羽織が
掛けられているのを見ると
秀吉あたりが来たのだろう
白雪は政宗の二の腕を枕に
身体を寄り添わせ細い腕を
政宗の腰に絡める様にして眠っている
絹の様に艶やかな髪を
指で鋤きながら
白雪の寝顔をぼんやり眺める
「…ん……」
「やっとお目覚めか…姫」
優しく囁いて
鋤いた髪を引寄せ
そのまま口付ける
「……ん…おきた」
猫の様にしならせて
身体を伸ばす
その優美な曲線を
なぞるように手を這わせ
布地越しの手触りを存分に楽しむ
「…いいな 目が覚めてすぐ
お前に触れられるってのは」
「ふふっ…私はいつも政宗の
匂いがするのに安心する」
そう言って確める様に
鼻先を政宗の胸元へ隠す白雪
自分の匂いなんて
いいとは思えないが
白雪が好んでくれることに
何ともいえない擽ったさを感じる
「明日からまた
準備や後始末で昼間は
構ってやれそうに無いが
夜は一緒に居れる
さっきみたいに先に寝るなよ」
「政宗の抱っこ気持ちよくて
いつの間にか寝ちゃってた」
「俺も…
お前抱いてるの気持ちよくて
いつの間にか寝ちゃってた」
額をこつんと合わせて
笑いあい温かく穏やかな時間を慈しむ
「腹へったな…
何か持ってくる待ってろ」
離れる身体に
名残惜しげな視線を感じ
思わず口元が緩む
「そんな表情するな離れにくい」