第5章 新たなる日々
笑みを浮かべ
言葉を交わし城へと急ぐ
笑顔ではいるが
三日も馬上で過ごし
疲れている筈の白雪を
一刻も早く休ませたかった
気忙しく
動いていると…
「政宗…秀吉の
世話焼きが移ったか?」
意地悪く笑いながら
現れた光秀が
政宗を手伝う為
その手を伸ばす
「はっ?秀吉?勘弁しろよ」
政宗も
笑いながら応えた
「光秀さんも秀吉さんの
世話焼きが移ったみたい」
にこにこしながら
白雪に言われて
政宗と光秀は
顔を見合わせると
吹き出す様に笑いだす
「一本取られたな」
「白雪に言われるとはな」
「お前ら
人を出しにして何笑ってる」
「世話焼きが移るとは…
存じませんでした」
「お前は少し光秀を見習え」
「光秀様…ですか?」
「言葉の裏を知れ」
「言葉の…裏を?」
玄関先で騒いでいると
向こうから見慣れた
仏頂面が現れた
「……なに騒いでるんです」
「あ家康!ただいま!」
白雪が笑顔を向ける
政宗も片手を上げて声をかけた
「今戻った」
「…おかえりなさい」
そう応えたきり俯いて
にこりともしない家康に
秀吉が真面目な顔で言う
「お前には三成あたりが
移ると調度いいんだが…」
「はっ?何の冗談です?」
眉をひそめる家康に
皆が声をたてて笑う
「…何が調度なのでしょうか?」
首をかしげる三成が
その意味を知る日は
恐らく来ない…
足を清め
茶で喉を潤し一息付く
身なりを整えた後
信長様の元へ
帰城の挨拶に向かう
長い廊下を歩き
天守へ赴く途中
顔見知りの女中と
出会い頭にぶつかり
言葉を交わした…
その様子を見ていた
白雪の表情が
面白い様に雲っていく
(この程度でやきもちか
…っとに可愛いな)
何も気付かぬ振りをして
手を引き歩き出す
「知ってる人?」
「あぁ この前菓子の作り方を聞かれ
一緒に作ってやったんだ」
「そうなんだ…」
「…羨ましいか?」
余裕の笑みで白雪を見下ろす
いちいち反応するのが
可愛いくて揶揄いたくなる
「もぉ!馬鹿!意地悪!」
「くっ…悪い…
あんまり可愛い顔するから…
そんな顔する…お前が悪い」
言いながら頬を撫でると
更に頬を赤らめ瞳に熱が宿る