第19章 闇~秘密の寺(開門)~
粘着質な水音の響く中
襖が開かれる
膳を手にした小坊主が
静かに入室し
酒の用意を整えた
「明智殿…お待たせ致した」
間もなく
紫の袈裟を着た
僧侶が入って来る
部屋に入るなり
絡み合う三人を見て
声をたてて笑った
「ほほっ…
これはいい処を見逃した」
先に座していた光秀が
杯を片手に僧侶へと差し出す
「まだ序盤といったところ…
お松はおそらく生娘」
僧侶は杯を受けとると
光秀の後方に控えていた小坊主に
酒を注ぐように視線で命じる
「ほう…それはそれは…
楽しみございますな」
二人はまるで痴情を
肴にするように酒を酌み交わす
「たった四日であの様に
夏野が淫らに堕ちるとは…
明慶殿にお縋りして正解でした」
媚びる様に僧侶へ
視線を向ける光秀
「ほっほっ…妙薬がありますのでな…
効き目はご存知の通り」
穏和な顔にゾッとする程
卑猥な笑顔を張り付けて
僧侶がニタリと笑った
「こちらの庭には
ケシの花畑がある様に思ったが…
妙薬とは深い係わりが
ある様にお見受けした」
「ほう…ケシをご存知か
流石は明智殿と言うべきか」
「先程お松が食した粥…
青菜に似せた物は
大麻の若葉でありましょう」
「ほほほっ…
それもご存知でしたか」
明慶と呼ばれた僧侶は
愉快そうに酒を煽る
「死なぬ程度になら
何をしても構わぬが…
お松は未通のまま仕上げて頂きたい」
「生娘のままでと申されるか」
少し驚いた顔で明慶は
光秀を覗き込む
「如何にも…
何よりそれを好むお人も多い」
「まぁ…確かに鮮血を散らす女子程
美しい物はありませんからな」
まるで目の前にそれがある様に
明慶は目を細めた
光秀は脇息に凭れると
酒を水のように流し込み
「生娘のままに
菊蕾で快楽を得る事は可能であろうか」
ここに来るまでの道すがら
考えていた事を口に出した
「ご希望とあらば」
自分に不可能はないとでも
言うように偉そうに胸を張る
「では明慶様を
見込んでそれもお頼み申そう」
酒を酌み交わす二人の前で
我を忘れて快楽を貪る女達
明慶は小坊主の腰に手を回し
小さな尻をなで回す
まだあどけなさの残る
この小坊主も既に
菊蕾にてこの僧侶を
受けいれているに違いない