第19章 闇~秘密の寺(開門)~
「お前の手腕は見事であった
安土にあって
この光秀の眼を掻い潜り毒を入手し
あまつさえあの独眼竜の本拠地で
花嫁の衣に毒を仕込んだのだ…
失敗はしたがなかなかの知力行動力」
光秀の言葉を
耳に流し込みながら
脈打つように大きくなる
身体の疼きに気が付くお松
「その力と女の身体を生かし
間者として我らに遣えろ…
さすればその対価として
夏野をお前に授けよう」
笑みを浮かべたまま
事もなげに光秀は言う
「なにを…夏野…は」
視角の情報が余りに鮮烈で
聴覚の情報を処理できない
見えない糸に
絡め捕られたように
動く事も話す事も
瞬きすら自由に出来ず
淫らな姿の夏野が
ただ脳裏に焼き付く
「くくっ…
お前には刺激が強すぎたか?」
「ほら……これが欲しくはないか」
光秀の指が夏野の顎に掛かる
長い指が唇をなぞると
夏野は自ら光秀の指を咥え
淫らに舌を這わせた
「っ……‼」
瞬間何かが弾けた様に
身体を熱が巡る
「あっ……な…つの」
一歩…また一歩
夏野に向けて脚が動く
夏野の潤んだ瞳が
ゆらりと揺れてお松を捉えた
「…お松…ふっ…ふふっ
お松も来たの?…ふふっ」
「…夏野?」
「あ…あぁ…早く…頂戴」
光秀は笑いながら
夏野の足先を弾くと
ミシミシと音をたてて
縄が軋み夏野の身体が
滑車を軸にくるくると回る
気が付けば
唖然と佇むお松の後ろに
天狗の面を付けた
裸の男が立っていた
「ひっ…!」
お松が飛び退くと
天狗は手にした小壷を
恭しく光秀に差し出す
男の身体は筋肉の鎧で覆われ
腕も脚も筋立っている
身の丈も鴨居に届く程で
浅黒い肌と相まってまるで熊の様だ
なにより身体の中心で
雄々しく反り立つそれが
男の強さを主張している
光秀は黙って
小壷を受けとると
回る夏野の脚を掴み
開かれた脚を
お松の方に向けて止めた
「あ…」
お松の口から
声にならない声が漏れる
意地悪くニヤリと笑い
光秀は天狗に小声で
開けと命じた
天狗の面の奥で
黒い瞳が獰猛に光を放つ
夏野の女唇がお松の前で
左右に大きく開かれる
その真上で小壷を傾けると
とろりとした液体が
女唇を覆う様に流れていく
「はっ…あっ……はぁぁ」
とたんに仰け反り
喘ぎ出す夏野