第18章 9月5日
翌日
政宗が贈られた
青黛色の反物を持って
仕事部屋に向かう白雪
文机の上には
一枚の和紙が置かれ
文鎮代わりに
美しい細工の施された
珊瑚の髪飾りが置かれている
「綺麗…」
和紙を持ち上げ
目を通す
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白雪へ
誕生祝いありがとう
感謝している
普通の者とは異なる
産まれた瞬間から
決められた
定めを負ったこの身を
恨めしく思った時もあった
だが今は
伊達家の当主として
産まれた事を誇りに思う
俺はこの先も
よりよい国を作る為
戦いながら生きていく
隣にお前がいれば
どんな困難も
越えられる
越えてみせる
だから隣で笑っていろ
何度でも言う
お前の笑顔が
俺の生きる力だ
追伸
裸で戯れ
愛を囁きあい
幸福に身を委ねる
ただ産まれた事に感謝する
一年に一度くらい
こんな日があってもいい
心からそう思えた
お前のおかげだ
愛している
伊達政宗
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「私も愛している…」
呟いて
髪止めを手に
立ちあがり
姿見の前で
そっと髪飾りを刺す
薄墨色の髪に
珊瑚色がよく映え美しい
この姿を目に
「思った通りよく似合う」
そう言って
偉そうに笑う政宗を
想像して頬が緩む
それから白雪は
仕事道具の詰まった
抽出しの奥から
漆塗りの小箱を取り出す
今までに政宗から送られた
全ての文が入っている
白雪の宝箱だ
中には喜多から譲り受けた
政宗が子供の頃の
手習いの書もある
今しがた
白雪の元へ来た新たな宝を
丁寧に畳み箱に仕舞う
いつかこの手紙が
伊達政宗博物館に
並んだりするのかな…
そんな事を考えながら
もう遠くなった現代を
ふと思い出した白雪だった