第18章 9月5日
「俺に似合いの色だと…
白雪に仕立てて貰えとある」
「本当?」
白雪がぱっと
目を輝かせる
「あぁ…本当は
自分で仕立ててやりたいが
最近は目が悪くて
思うように縫えないから
代わりに白雪に
仕立てて貰ってくれと」
「お母様…
目が悪いの?心配だね」
「まぁ…年のせいもあるだろ」
「そっか…私頑張るね
楽しみに待ってて」
「あぁ…ありがとう楽しみだ」
新しい着物も
楽しみではあったが
それよりもこうして
贈り物を届けることが
普通に出来るようになった
母との正確には両家の
関係を嬉しく思う政宗
「よかったね
お母様から…反物とお手紙」
これまでの経緯を知る白雪も
嬉しそうに微笑む
今更ながら
信長の影響力に感服し
見習うべき事を
再確認したのだった
その夜
青葉城では
案の定
政宗の誕生祝いの宴が
盛大に催された
知らぬふりで驚いてやれば
益々笑顔を深める皆に出逢える
正月に一つ年を加え
誕生日を祝う
概念を持たぬ彼らは
白雪の発案で
施された宴を
心ゆくまで楽しんだ
家臣達も女中達や
下働きの者達まで
食べて飲んで歌い踊り
賑やかに時は過ぎる
白雪は
皆に祝われる政宗を
幸せそうに見つめ
幸せそうな白雪を見ると
政宗も嬉しくなる
江介が笛を吹き
喜多が歌い
与次郎が腹踊りで笑わせる
たくさんの
笑顔に囲まれて
数えきれない祝福を受けて
自分の
産まれた日を祝う
安土で過ごした誕生日の様に
刺激や驚きこそないが
穏やかで
幸福に満ちた一日に酔う
この国の全ての民が
こんな一日を過ごせる様に
その為に
明日からまた前進する
そう心に誓い
政宗の夜は更けていく
空には大きな月が輝き
大志を抱き眠る男達を
包むように
静かに照らしている
穏やかに
柔らかに