第18章 9月5日
「ふふっ…」
「ははっ…」
顔を見合わせて
笑い合う
「…いいなこういうの
くだらない事で笑い合って」
「お腹も一杯で
着る物も
住む家もあって
得意な事で人の役にたてて
大好きな人がいて…」
「あぁ…それが
何時までも続くのが
俺の理想とする世の中だ」
「…作れるよ…政宗なら」
「一番近くで
見せてやるから離れるなよ」
何時もの様に
偉そうに言って
自分を煽る
「言われなくても」
「生意気」
「誉め言葉ね」
「ははっ…
言うようになったな?」
「何時までも
負けてないんだから」
ずっとお前に
負けっぱなしだ…
絶対に
言葉にしない一言を
そっと胸に仕舞い
「これならどうだ」
唇を掠め取り
にやりと笑う
「っ……ずるいっ」
「降参か?戦略勝ちだ」
「もぉ~」
「何時でも
受けてたつぞ
勝てるといいな」
「むぅぅ~」
不服気に
顔を歪めて抗議する
「可愛い顔が台無しだぞ」
「っ…もぉすぐ
そういう事言う…」
頬染める白雪の
手を引きながら
幸福感に浸る
初秋の風と
満たされる
心を感じながら
ゆっくりと
城下を歩く
城に戻れば
家臣達と白雪が
政宗に
内緒のつもりで用意した
盛大な宴が待っている筈だ
今はまだもう少し
二人の時間を過ごしたい
当主としての政宗でなく
ただの政宗でもう少しだけ
白雪の横顔を眺めながら
そんな風に思う政宗だった
城に戻ると部屋は届け物で
埋め尽くされている
信長様が自ら言い出した
我が誕生日には安土城に参詣せよ
という御触れは大名達にとって
顔を売る格好の機会となり
様々な祝いの品を持ち寄る
品評会の場にもになった
やがてそれは
他の武将達にも届く様になり
政宗の所にも
付き合いのなかった
諸大名達から挙って送られてくる
そんな中で一つ
喜多から
差し出されたのは
「これが…母上から?」
「はい先刻届きました」
桐箱から出て来たのは
美しい青黛色の反物
「わぁ…素敵な色」
広げようと持ち上げると
カサリと何かが落ちた
「あ…手紙?」
白雪が拾い上げ
政宗に手渡す
「あぁ…母上からだ」
政宗は目を通した後
白雪に視線を移した