第18章 9月5日
寝不足の白雪に
少し休めと言い付けて
部屋を出る
廊下を少し行くと
家臣達とすれ違う
「おはようございます
今日はお祝いの日ですね
おめでとうございます」
立ち止まり
頭を下げる家臣達
「おはよう…
あぁ朝から祝って貰ってる」
開口一番に白雪と同じく
祝いの言葉を口にする
江介に思わず笑みを溢す
「白雪様お手製の
朝餉はいかがでしたか」
「旨かった…って
なんで知ってる?」
予想外の
台詞に驚く
「ご自分お一人で作りたいから
今朝は台所に入らないて欲しいと
昨日の内に女中達や我々に
頼みに来られました」
にこにこと笑み浮かべ
昨夜の白雪の様子を話す江介
随分前から色々考えて
準備してきた事に胸が熱くなる
「…早起きした分
休ませてるから
俺の部屋へは誰も行かせるなよ」
白雪の甘い声が
漏れ聞こえてましたから
暫くは誰も近付きません
とは言えない江介は
黙って頷くしかない
「御舘様はどちらへ?」
「忙しくてあいつらの
相手してなかったからな
少し相手をしてくる」
そう告げると愉しげに
鍛練場へ姿を消した
鍛練場では
若い家臣や
同年代の家臣達が
汗を流している
政宗の姿を認めると
我先にと近寄ってくる
「おめでとうございます」
「おめでとうございます
また1つ年をとりましたね」
「おめでとうございます
これで六つ違いか…今なら勝てるかな」
恭しく頭を下げる者
軽口を叩いて笑う者
態度は様々だが
皆一様に親しみと
尊敬を表している
「おう…試してみるか」
にやりと
口角を引き上げて笑えば
「いいんですかっ?」
嬉々として
手合わせを名乗り出る
軽くいなす程度の者から
歴戦の兵士まで
分け隔てなく相手をして
気持ちの良い汗を流す
「ありがとうございました」
「かぁ~また負けた」
「精進致します」
口々に令や感想を
述べる家臣達
それぞれの長所と
弱点を教えてやり
汗を流しに
湯浴みへ向かう
すると水場の下女中が
白雪が湯浴み中なので
少し待ってくれと言う
政宗は人差指をたて
しーっと唇にあてがい
内緒だと示すと
悪戯な笑みを残して
音もなく湯殿へ
吸い込まれて行った