第18章 9月5日
静かな部屋に水音が響く
「んっ…ふっ…ん」
唇を首筋に運べば
甘い声が増していく
「まさっ…むね…あっ」
帯に手を掛けると
白雪の躯を軸に
するすると螺旋を描いて
足元に落ちた
明るい陽射しの中で
暴かれていく
裸体の美しさに
思わず手を止め
魅せられる
真っ白な肌は
儚く消えてしまいそうで
その稜線を確かめるように
ゆっくりと触れていく
白雪の少しずつ
高くなる体温に
呼び起こされた
甘い香りが
甘い吐息が
鼻腔に
耳中に浸透して
政宗の意思を
凌駕していく
夢中にさせる筈が
気が付けばいつも
自分の方が
夢中になっている
そのことすら
楽しむ様になっていた
「だ…め…朝な…の…に」
「朝だと…惚れた女を
抱いたら駄目って…
そんな決まりでも…あるのか」
「んっ…んん…なっ…いけど」
すっかり裸に剥いて
何度目か分からない
口づけを深める
くずくずに蕩けて
膝から崩れ落ちるまで
離してやらない
「んっ…ふぁっ…」
やがて畳に広がった
藤色の着物の上に
白い躯がしどけなく横たわる
「綺麗だ…」
掠れた声で告げると
政宗の余裕のない声に
はっとしたした白雪が
恥じ入る様に
その躯を隠そうと
身を捻じった
背を向けた恰好となり
目の前に滑らかな
丘陵が表れる
まるで
食べ頃の水蜜桃を
差し出された様で
遠慮なく噛じりつく
瑞々しく柔らかな肌膚に
政宗の犬歯が食い込んだ
「ああっ…」
弓なりに反らせた
背中には
何時でも冷静な
もう一人の政宗が
群青色の鱗片を
煌めかせて
だらしなく
耽溺する政宗を
嘲笑うかの如く
見下ろしている
生涯囚われの身の
隻眼の龍に
見せつけるように
溢れる果実を味わって
流れる汁を飲み干し
熱に浮かされる
己をもて余す
「もっ…だめっ…んっ…」
「なにが…だめ…なんだ」
白雪の唇は
政宗の望んだ言葉を
望んだ通りに奏でては
政宗を悦ばせる
「もっ……きてぇ…なかにっ…」
幾度も幾度も
舌技と指技によって
昂られた躯はたぎり
もう政宗自身を埋めるしか
治める手立てがないと
白雪も知っている
虚ろな瞳に
天を仰ぎ反勃つ
雄々しい政宗を写して
濡れた唇が
早くと急かす