第18章 9月5日
腕の使える状態にあるのに
誰かに食べ物を口に運ばれる
その行為に一瞬
たじろぐが……
白雪の笑顔を
曇らせるのが嫌で口を開いた
口中に広がる仄かな甘味と
ふんわりとした柔らかな食感
「っ…うまい」
「でしょう?」
嬉しそうに
笑みを広げる白雪は
「政宗の好物だって知って
離れている間もたくさん
たぁ~くさん練習したんだから」
両手を腰に当てて
得意気に話す
「離れている間?」
「この料理ね…私の時代には
伊達巻って呼ばれてるの」
「へぇ」
手元の黄色い焼物に
視線を落とす
「伊達政宗の好物だから」
「は?」
意味が分からず
白雪に視線を戻すと
可笑しそうに笑いながら
言葉を続けた
「政宗の家臣や
伊達家に仕えていた人達の間で
そう呼ばれ初めて…
それが町の人達にも
広がったんじゃないかな?
諸説あるみたいだけど」
驚いて
また手元の料理を見る
「そう本に
書いてあるのを見て
いつか政宗にって思って
練習して得意料理にしたの」
にこにこと
笑みを浮かべる白雪
愛おしさに
鷲掴みにされた胸が
息苦しくい
離れていた間も
自分の為に
頭と身体を使い心を砕き
自分の事を忘れず
愛してくれていた事が
何より嬉しい
自分もまたそうであったから
白雪が同じ様に過ごしていた事が
嬉しくてたまらない気持ちになる
「……食べ終わったら…覚えてろよ」
「え?」
「そんな可愛い顔で
可愛い事言って
ただですむと思うか?」
ぶぁっ…と一気に
顔を赤く染めた白雪は
恥ずかしそうに俯いて
政宗を更に煽る
「もぉ…ちゃんと食べてね」
「あぁ…ちゃぁんと栄養とらないとな?
今日はお前からたくさんの
祝いを受け取るからしっかり
食べておくとしよう…楽しみだ」
いつもの様に口角をあげ
余裕の笑みを見せれば
ほぅっと見惚れる白雪がいる
自分の一挙手一投足に
魅いられる白雪の姿が
何よりの贈り物だと
白雪を見つめながら
想う政宗だった
白雪の手料理をすっかり
平らげた政宗は
片付けると言う
白雪を制して
女中に片付けを頼むと
人払いを命じた
「さて…じゃあ約束通り
三回目の祝いを貰うかな」
「っ…約束なんて…んっ…んん…」
言葉を遮って唇を貪る