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イケメン戦国~捕らわれた心~

第17章 闇~秘密の寺~


「あの夜…
政宗様は南蛮のお酒を
しこたま飲まされて…
歩くのもやっとで
私と夏野でお世話をさせて頂きました」


政宗はぼんやりとした記憶を
鮮明な吐き気と頭痛と共に思い出し
思わず顔をしかめた


「あぁ…お前達だったか」


「はい…政宗様は
夏野を気に入ったご様子で
綺麗だと大層褒めて…
夏野は今夜見初められたら
女中の仕事から抜けて
優雅に暮らせると…夢見て…」


政宗は溜息をついた…
確か花見の翌日には
小国で戦が始まりその翌日に
政宗も戦へと出向いていた


「戦が始まり
俺が不在になるまでに
半日はあったのに
何故何も言わなかったんだ
それが今更…」


「それが…夏野が化粧を直して
褥に戻ろうとしたら…
起き抜けで機嫌の悪い政宗様に
家康様を呼ぶように怒鳴られ
その後は近づく事もままならず…
戦が始り…その後の政宗様は
突然おいでになった
白雪様ばかりお構いになられて…」


そう言われて
白雪と出会ってから
女中や町娘達とは
まともに話もしていなかった
自分に気が付く


出会った時から夢中だった…
何故かは分からないが
理屈じゃなく欲しいと願った


「夏野は…白雪様がいなければ
あの夜の様に政宗様はきっと
自分を可愛がって下さると…
信長様がお二人の御婚姻を
お認めに成られた晩には
悔しいと涙を流して…
私の胸で泣くのです…
白雪様に政宗様を盗られたと
言って泣いたのです」


「それが白雪を狙った理由か」


余りにくだらないその理由に
沸々と怒りが沸き起こる


その怒りが
愛情からでなく
野心から自分を欲した
夏野へ向けられた物なのか


実らぬ恋をした相手の戯言を
実現させんが為暴挙に出た
お松へ向けられた物なのか


酒に溺れて前後不覚となり
欲望のまま考えなしに動いた
自分へ向けられた物なのか


もう分からなかった


ただ…つまらぬ事で
白雪が危険に晒された
事実に無性に腹が立った


怒りがゆらゆらと
まるで沸騰する湯気の様に


身体から涌き出て
空気を変えていく


広がっていく
尋常でない殺気は


戦も殺しも知らぬ
お松の肌をも


ビリビリと感電させ
震え上がらせた


「お前の愛に免じて
夏野は殺さずおいてやる」


その一言で
弾かれた様に
お松が走り出す


「たっ…たっ…たす…たすけ」

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