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イケメン戦国~捕らわれた心~

第16章 十月十日~(婚姻の儀)



「そんな事…私の方こそ
いつも力になって貰ってるのに
何も出来なくて…」


困った様な
申し訳ない様な

切ない表情の白雪に
家康が声を掛けた


「今夜一晩休めば
大分楽になるはずだよ

全快には
暫く掛かるだろうけど

あんたが気に病んで
治るもんでもないから」


「ありがとう家康さん…」


「悪いな家康」


ぶっきらぼうながら
家康らしい優しさに
感謝する政宗と白雪



「…別に
…宴に参加はさせれないけど
どうしても二人に自分の口で
祝いを言いたいって
この人が言うから」


喜多の身体を支えながら
ふいと視線を逸らす


「ふふ…相変わらず優しいね」


「はぁ?…もぅ早く行きなよ
喜多も…もういいね?さぁ休んで」


家康は冷たい言葉とは裏腹に
優しい手付きで喜多を寝所に誘う


「白雪様…本当にお綺麗です
政宗様も立派なお姿で…」


喜多はもう一度
二人の姿を瞼に納めて
深々と頭を下げた


「無理するなよ…
すっかり良くなるまでは
白雪の世話役は禁ずる…
これは君主としての命令だ」


政宗は答えを待たずに
白雪の手を引き歩き出す


「喜多…ゆっくり休んでね」


白雪は心配そうに
喜多の顔を伺いながら


政宗に引かれて
廊下の先へと姿を消した


政宗達の姿が
見えなくなってから


家康に促され
寝所に戻る喜多


「家康殿…
私はもう大丈夫ですから
どうか政宗様と白雪様の元へ」


「向こうは織田軍が付いてる
あんたは自分の心配して」


まだ熱の残る身体を
褥に横たえさせながら


「これであんたに何かあったら
俺が政宗さんに斬られる…」


喜多は苦笑いを浮かべる
家康を見つめながら


「それは困りましたね…
では早く良くならなくては…」


そう答えると瞳を閉じた


瞼に浮かぶのは
暗い表情で遠くから
仲睦まじい母と弟の
姿を見つめる梵天丸


元服して弟である
小十郎と共に
初陣を飾る姿


命とは言え
父に銃口を向け
夜な夜な魘される姿



余多の試練に負けず
立ち向かっていく
政宗の後姿



そして…
凛々しく成長した政宗が
白無垢姿の花嫁を
優しく見つめる姿


懐かしい日々と
逞しく成長した政宗を
誇らしく思いながら


静かに眠りに落ちる
喜多であった






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