第16章 十月十日~(婚姻の儀)
緊張から
凝り固まった
表情も和らぎ
政宗の言葉に反応する
余裕も出てきた白雪
政宗は安心したように
優しい笑みを浮かべる
「っ…ありがとう
…緊張してたのバレてたんだ…」
「当たり前だ…
お前しか見てないからな」
にやりと口角を上げる
「っ…また…そうゆう事を言う…」
「お前が望むなら
何処でも何時でも
何度だって言ってやるよ」
悪戯な顔で笑い
白雪の耳元に囁く
「 愛 し て る 」
言いながら
襖に手を伸ばす
「っ……」
真っ赤になって
息を詰める白雪を横目に
「待たせたな…三成」
政宗がいつも通り
余裕たっぷりの
態度で進み出る
蕩けた顔を
隠す様に
慌てて俯く
白雪を
楽しむ様に
盗み見ながら
三成達と
廊下を進む
群青の空には冴えざえと
金色の三日月が浮かび
細い月明かりが
花嫁の美しさを
際立たせる
立ち止まり
月を見上げた
「…美しいな…月も」
言われた白雪が
月を見上げ
瞳に月の輝きを写した
「お前も」
政宗の言葉に
身も心も夢色に染まり
声も出せない白雪
指先を絡めとり
爪先にに口付ける
「あっ…」
思わずこぼれた
微かな声が
政宗の心を楽しませる
熱に染まり
翻弄される白雪を
楽しみながら
手を引き再び歩き出す
廊下の角を曲がると
少し先の部屋の襖が開け放たれ
家康と女中に支えられた
喜多の姿があった
白雪が目を見開き
思わず駆け寄る
「喜多!」
幾分回復の兆しは
見えるものの
まだ蒼白い顔の喜多
「政宗様 白雪様
おめでとうございます」
それでも毅然とした声で
二人に祝いの言葉を述べ
不自由な身体を折って
頭を垂れた
「起きて大丈夫なの?」
心配そうに近寄る白雪に
左手を見せない様に庇いながら
「晴れの日に
この様な失態を…
申し訳ございません」
そう言って力なく
微笑んで見せる