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イケメン戦国~捕らわれた心~

第16章 十月十日~(婚姻の儀)


同じ空間に存在する
ただそれだけで

爪の先から髪の芯まで
ぬくもりに包まれ
全てが満たされていく

存在ひとつで
こうも気持ちを
左右されることに

白雪自身笑ってしまう


(…ほんと…私…
政宗のこと好きずきる)


そっと政宗を盗み見る


凛とした横顔に
胸が熱くなるのを
押さえる事が出来ない

トクン…トクン…

高鳴る心音を誤魔化すように
そっと左胸を押さえた



(……あ~ぁ…なんて顔だよ
ったく…そんな分かりやすい
顔で俺を見て…)



そわそわと
落ち着き無く
視線をさ迷わせては

ちらちらと
自分を盗み見る白雪に

緩みそうになる顔を
必死に抑える

その
恋情のたっぷり籠った
愛しい視線に
気付かぬ不利をしながら


信長の点前を頂く


抹茶のふくよかな香りが
鼻腔を擽る

口に含めば
とろりと喉の奥に流れて
濃厚な甘みと苦みを与える

その静かな時間と
口中の僅かな苦みが



心を落ち着かせてくれる



政宗とて
白雪と過ごす時間は
この上なく気持ち良い

だからこそ
自制しなくては
ならなかった

その姿が瞳に写れば
触れたくなる

ひと度触れたなら
もっと触れたくなる

血管を流れる
血の一滴一滴が
温度を増して

身体の末端まで
熱が駆け巡る

流れる速度が
どんどん増して

欲望を
止められなく
なるのが怖い

(冷静になれ…
お前がしっかりしなくて
誰が国を納め白雪を護る…)

愛しさの余り
回りが見えなくなる事の
恐ろしさを知った政宗


自分を律する事は
得意だったはずなのに

愛欲とはこうも心を
掻き乱すものなのかと


改めて人の心を知る


もし
毒針に触れたのが
白雪だったら…

考えただけで
寒気がする

政宗は
白雪と愛し合って
自身の弱さを知った


今はもう
白雪がいなければ
息さえ出来ない

政宗にとって
半身を失うより地獄


そんな風に想う自分を
何処かで恥じていた


それだけではない
近頃は謀反の制圧や
隣国との小競合いの戦でも


刀を振るうのを躊躇する
戦わずして納める方法を
模索するなど


以前の政宗なら
あり得なかった


いつから俺は
こんなに臆病になったのか
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