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イケメン戦国~捕らわれた心~

第16章 十月十日~(婚姻の儀)


同時に腹の中に黒く
禍禍しい思いが沸き上がる

白雪を傷付ける者は
許さない

城中の女中を殺してでも
犯人をあげなくては…

「おい…
そんな殺気だった顔で
白雪の側に行く
つもりじゃないだろうな」

光秀に言われ
はっと我に返る

「はぁ…政宗さんは
白雪の事となると
冷静さを欠くから」

家康にまで言われ
己の不甲斐なさを痛感する

「……そうだな…悪い」

肩を落とす政宗に
光秀が笑いかける

「悪くはないさ…お前にも
人らしい思いが
残っていたと言う事だ」

「人を鬼みたく言うな…」

「そうですね…
狼狽える政宗さんは
新鮮ですけど…
悪くはないですね」

家康がくすりと笑う
それも一瞬の事で
真顔に戻ると

「直ぐに指を落としたから
毒はそんなに回っていない筈です
解毒剤も飲ませたし…
ここは俺がついてますから…
政宗さんは
白雪の側に居てください」

そう言って政宗の背を押した

「俺は女中達に
探りを入れてみよう」

光秀が妖艶な笑みを称え
立ち上がる

「ああ…悪いが頼む」

「探るのは得意だ
任せて損はないぞ」

心底楽しげに笑う
光秀を見て
家康がぽつりと呟いた

「光秀さんを見てると
敵でなくて良かったと
本当にそう思います」

「誉め言葉として
受け取っておこう」

光秀は何時もの
飄々とした顔で部屋を出る

政宗は今一度
喜多の元へと向い

その顔をじっと見つめた
乳母とはいえ

子の無い喜多から
乳を貰った訳ではない

教育係と言った方が
しっくりくる

しかしながら
両親よりも長い時間を
共に過ごした仲だ

「…っ…まさ…むねさま」

「喜多!」

うっすらと目を開けた喜多が
左手の痛みに顔をしかめた

保春院がそっと
肩を抱き起こすと

家康が薬と水を手に近寄る

「痛み止めと化膿止めです
飲めるだけ水も飲んで下さい」

政宗が受け取り
飲ませてやる

喜多は保春院と政宗に
申し訳ございませんと告げて
また目を閉じる

脈をとっていた家康が
安堵した顔を向けた

「もう大丈夫
呼吸は落ち着いてるし
出血も止まってるから
毒は回っていない

熱は切り落とした
怪我に対しての
反応だと思うから」

ぐるぐると布が巻かれた
喜多の左手に薬指はもうない

「すまない…喜多」

絞り出す様に告げ
白雪の元へと向かった
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