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イケメン戦国~捕らわれた心~

第16章 十月十日~(婚姻の儀)


最上家の間者と
古くからの伊達家臣に疎まれ

最上では伊達に染まった
裏切り者と疎まれ

父亡き後家督を受け継いだ
政宗を退かせ

弟を表舞台に引きずり出し
母が後継人として

伊達家を動かせと
そそのかされ
政宗に毒をもった母

一人の命で
戦を避けられるのならば

それも立派な戦略


「…申し訳ありません…
過ぎた事をくどくどと…
武将失格だと父上に叱られる」

薄く笑うと
母の肩を抱いた

「武将の妻なら
我が子一人の命より
幾千の命を護るべきだ」

「…政宗」

「俺の命か小次郎の命
どちらを取るかで戦を避けられた

助かる命があったのだから
覚悟を決めるべきだった

母上はそれに従い…俺は…」

政宗の瞳が悲壮に染まる

「俺は
母上の決断をはね除け

その決断を
小次郎に向けた…」

保春院が耐えきれず
両手で口元を覆う


「母上…あいつは…

これでいいんだって
笑ったんだ

俺には
奥州統一は出来ない

だから
これでよかったんだって

母上を許してやれって
俺の腕で…腕の中で

笑って

死んでいった」


政宗の脳裏に
今も鮮明に残る

弟の
穏やかな笑顔

真っ赤な血に
染まった手で

政宗の頬を撫で
これでいいんだよと

何度も繰り返し
笑って死んでいった

父上と同じ様に
未来を政宗に託して

満足そうな顔で
先に逝った大切な弟

犠牲になった命の為にも
政宗は強くならなければ
ならなかった

保春院は嗚咽を堪えられず
自らの胸を鷲掴む様にして
その場に泣き崩れた

暫くして
落ちた保春院は

改めて政宗を見つめ
口を開いた

「愚かでした…
浅はかだった

でも…二度と同じ過ちはしない

白雪のことは何も知りません
亡き夫と子供達に誓って…」

政宗は母の
瞳をじっと見つめ

信じますと一言告げて
立ち上がる

「こちらへ」

再び保春院へ
手を差し伸べると

信長達の待つ部屋へとむかった

保春院は部屋に入るなり
その光景に絶句する

亡き夫が目をかけ
その才を買って
政宗の乳母となった

保春院にとっても
信頼出来る
数少ない人間の一人

片倉喜多が
蒼白な面持ちで寝かされている

「喜多っ!」

思わず駆け寄り
名を呼ぶ

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